2009 Fiscal Year Annual Research Report
トランスクリプトームの網羅的解析法を用いたマツ材線虫病の解明と抵抗性育種への利用
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21380100
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
白石 進 Kyushu University, 大学院・農学研究院, 教授 (70226314)
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Keywords | 植物 / 遺伝子 / 病理学 / マツ材線虫病 / トランスクリプトーム / 抵抗性 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
マツ材線虫病は,これまでの研究で線虫侵入からマツ枯死に至る病徴進行状況が詳細に解明されている。しかし,線虫によって枯死する原因はいまだに未解明のままである。枯死原因の解明を目的として,発病および病徴進展に関与する遺伝子を探索するために,トランスクリプトームの網羅的分析を行った。 比較的簡便にトランスクリプトームの網羅的解析が可能なODD(ordered differential display)法を改変し,線虫接種後のマツにおいて発病とその後の病徴進展に伴い発現してくる遺伝子を時系列的に解析した。クロマツ感受性クローン(4年生)を用いて,線虫接種後1日から2ヵ月(枯死)までの8ステージの当年枝を採取し,ODD分析を行った。線虫を接種した個体では2週間後に明らかな病徴が見られ,1ヵ月後に枯死し始め,2ヵ月後に完全に枯れた。 ODDで検出されるピーク(発現遺伝子)数は,線虫接種1~2日後,すでに接種/非接種個体間で違いが認められた。これは,線虫の侵入に対する宿主(マツ)側の過敏感反応で起こったと考えられた。その後(3日後),一旦,接種・非接種間の違いの減少がみられたが,1週間後以降は,接種と非接種個体間の差異は増大し,接種個体の発現遺伝子数は減少,しかも非接種と大きく異なる発現遺伝子プロフィールを示した。これは,接種個体での線虫ストレスに対する反応が大きくなった(病気が進展した)ためと思われる。このステージでは,多くの遺伝子発現が低下し,生理的活動が抑制されたと考えられ,Fukuda(1997)やKuroda(2007)の結果に付合する。
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Research Products
(1 results)