2009 Fiscal Year Annual Research Report
ブナ林堅果豊凶作メカニズムの解明:安定同位体による土壌-植物間窒素循環系の定量化
Project/Area Number |
21380103
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
韓 慶民 Forestry and Forest Products Research Institute, 植物生態研究領域, 主任研究員 (40391180)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
壁谷 大介 独立行政法人森林総合研究所, 木曽試験地, 主任研究員 (30353650)
千葉 幸弘 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, 研究室長 (90353771)
古澤 仁美 独立行政法人森林総合研究所, 立地環境研究領域, 主任研究員 (40353841)
楢本 正明 静岡大学, 農学部, 助教 (10507635)
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Keywords | 豊凶作 / 非構造性炭水化物 / 窒素動態 / 貯蔵機能 / リター分解 |
Research Abstract |
1.2009年結実に至ったのが標高1500mに生育しているブナ個体においては、結実に伴い幹・根のテンプン量が低下した。しかし、落葉期における各器官の非構造性炭水化物量の経年変化を比較すると、地上部の枝・幹では顕著な低下が見られず、著しく低下したのは地下部の根だけだった。これらの結果から、繁殖の際に利用される炭素資源が主に地下に貯蔵されていることがわかった。また、樹体内窒素貯蔵量は、2005年の豊作年以降、2007年まで増加した一方、2008年には前年に比べて減少した。これらの結果から、樹体内の貯蔵窒素は、2008年までに飽和量に達した可能性がある。 2.安定同位体標識を用いて結実に寄与する炭素源を調べた。その結果、展葉初期には、葉自身がまだ炭素シンクの段階であり、開花など繁殖への炭素源は貯蔵炭水化物が担っていた。一方、葉が炭素源へ転換した後には、当年の光合成産物が繁殖生産の炭素源になった。高木性樹種の種子生産の炭素源が明らかされたことは、結実豊凶作のメカニズムの解明に大きく寄与した。 3.標高900mの90年生と200年生のブナ林において、林分の土壌特性を調査した。無機態窒素のほとんどはアンモニア態窒素として存在した。また、生育期間中には土壌の窒素プールが減少した。これは、植物の吸収が土壌のアンモニア態窒素の生成を上回るためだと考えられた。 4.安定同位体標識を用いた植物体内の窒素動態解明のために、予備実験として、窒素吸収後の転流速度および器官間での再分配の有無の確認を行った。その結果は現在分析中である。
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