2011 Fiscal Year Annual Research Report
ブナ林堅果豊凶作メカニズムの解明:安定同位体による土壌ー植物間窒素循環系の定量化
Project/Area Number |
21380103
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
韓 慶民 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, 主任研究員 (40391180)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
壁谷 大介 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, 主任研究員 (30353650)
千葉 幸弘 独立行政法人森林総合研究所, 温暖化対応推進拠点, 拠点長 (90353771)
古澤 仁美 独立行政法人森林総合研究所, 立地環境研究領域, 主任研究員 (40353841)
楢本 正明 静岡大学, 農学部, 助教 (10507635)
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Keywords | 豊凶作 / 非構造性炭水化物 / 窒素動態 / 貯蔵機能 / リタ-分解 |
Research Abstract |
1.個体レベルでの炭素資源量がブナの繁殖に与える影響を評価するために、根の非構造炭水化物濃度(NSC濃度、個体レベルの炭素資源量の指標として用いる)を繁殖個体/非繁殖個体の間で3つの時期-繁殖前年の夏(花芽形成期)、繁殖前年の冬、繁殖当年の冬(繁殖後)-において比較した。繁殖当年春、観察していた全てのブナ個体で開花が観察された。開花量には個体間で大きなばらつきがあったが、開花量(開花の有無)と根のNSCとの間に明確な関係はみられなかった。一方、結実個体は、非結実個体より繁殖前年冬のNSC濃度が高く、また結実個体では繁殖後にNSC濃度の低下がみられたのに対し、非結実個体では逆にNSC濃度が上昇した。以上の結果は、ブナにおいては個体レベルの炭素資源量は繁殖(=花芽形成)のキーシグナルではないものの、繁殖成功を左右する要素であることを示唆している。 2.枝の窒素濃度が結実によって、低下したが、成長後期における土壌からの吸い上げや落葉前における葉からの回収によって再補充された。個体レベルにおける種子生産の窒素資源量は葉からの回収量とほぼ同じであった。これらの結果は、窒素貯蔵量より、花芽分化する夏期における資源の供需バランスが結実豊凶の解明の鍵であることを示唆している。 3.展葉後に窒素安定同位体15Nを含んだ肥料を施肥し、葉及び各繁殖器官を定期的にサンプリングした。今後これらのサンプルを分析し、開花や種子生産など一連の繁殖器官への貯蔵窒素と当年土壌からの吸い上げの寄与度を評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結実がブナ樹体内の貯蔵炭水化物と窒素資源量に及ぼす影響を評価し、豊凶作のメカニズムを解明することは、本研究の目的である。現在、安定同位体によって結実の炭素資源のソースは明らかにした。また、長期な野外調査によって、貯蔵資源と結実とのかかわりについて理解を深めた。更に、安定同位体によって結実の窒素資源ソースの解明について、分析中である。以上、計画通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、おおむね計画通りに進展しているが、結実豊凶作の究極要因の解明(開花結実のトリガー)までに至らない。貯蔵資源より、花芽分化時期における資源の供需バランスは重要であると考えられる。本研究課題の研究成果を踏まえて、次期課題を提案したい。
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