2010 Fiscal Year Annual Research Report
分子マーカーによるサケの系群識別と海洋生活史の究明
Project/Area Number |
21380115
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
阿部 周一 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 教授 (80125278)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 俊平 独立行政法人水産総合研究センター, さけますセンター, 研究員 (70425461)
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Keywords | サケ類 / DNAマーカー / SNP / 遺伝構造 / 系群識別 |
Research Abstract |
1.昨年度までに連携研究者とともに開発したサケの一塩基多型(SNP)マーカーのうち60座について、それらの変異性と遺伝特性を100以上の環太平洋集団において分析した。その結果、SNPマーカーの変異性はアラスカなど高緯度の集団で高く日本を含む低緯度の集団で低いという結果が得られ、ロシアや北米の集団より日本集団が高い変異性を示すというミトコンドリアDNA(mtDNA)やマイクロサテライトDNA(msDNA)マーカーにより示された結果と異なっていた。この違いには3種類のマーカーにおける何らかの測定バイアスが影響している可能性があり、生息域を網羅した集団の収集のほか、特にmsDNAやSNPマーカーの作成と応用については十分な注意を払う必要があると考えられた。 2.msDNAとSNPマーカー、さらに耳石による海洋におけるサケの系群分布調査を行い、冬季アラスカ湾で越冬する未成熟サケは、湾北部に北米系、湾南部には日本やロシアなどアジア系が多く分布すること、また、夏季のベーリング海中部から北部では成魚・未成熟魚ともに日本系サケの割合が高いことが分かり、昨年度の分析に続きサケの海洋分布はノンランダムであることが確認された。 3.ベニザケ集団の遺伝的変異性をmtDNAおよびSNPマーカーにより調べたところ、国内の集団ではアラスカなど海外の集団に比べ遺伝的多様性が極めて低いこと、一部の集団ではボトルネックが過去に起きたこと、などが初めて明らかになった。これらの知見は、我国におけるベニザケ資源の回復と増養殖のための基礎的データとなることが期待される。
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