Research Abstract |
沿岸性鯨類スナメリは混獲など人間活動の影響を受けており,本種の保全のためには個体数のモニタリングが必要である.目視調査により個体数が推定されてきたが,ほとんどが,調査ライン上の発見確率100%の仮定の下,安全を見込んだ過小推定となっていた.発見確率が波浪など種々の要因の影響を受けて変動することも考慮されていなかった.個体数推定法の改良が必要である, 音響調査,船からライントランセクト型目視,セスナからライントランセクト型目視を同一調査線上で同時に行い,それぞれの発見確率を推定する方法を開発した(白木原ほか,2011).この方法を用いて,スナメリに適用可能な発見確率〓推定することが当該年度の主目的であった. 2011年10月に長崎県大村湾で調査船から音響データロガー(A-tag)2つを曳航しながら,音響計測範囲を1名の調査者が目視観察した.大村湾の半分以上の海域を調査し,好天でスナメリを発見しやすい状況であったものの,発見は4群のみであった.これは長年の調査経験からの予測に反するものであった.2012年2月に再度,音響,船目視,セスナ機目視の併用調査を試みた.この時にも十分な発見は得られなかった. 上記の洋上調査とは別に,陸上を基地とする調査も試みた.千葉県銚子市海岸で原則的に毎月,陸上定点からの2名の独立観察者による目視調査と音響データロガーによるスナメリ鳴音収録調査を実施した.十分な発見があり,波浪などが発見確率に与える影響を定量的に評価するためのデータを蓄積することができた.
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