Research Abstract |
今年度は,まず,根圏土壌の水,イオン性物質動態を高分解能でモニタリングするための小型高精度TDR水分センサーの試作を試みた。従来の知見を参考にコイル型プローブの製作を行ったが,期待する精度が出なかったため,小型3本プローブ型センサーに設計を変更し,試作センサーを用いて,人工乾燥条件下の灌がい-蒸発-塩集積実験においてセンサーの性能評価を行った。このセンサーを用いて,次年度は,根圏において,根呼吸,微生物呼吸と温度,水分量の関係を明らかにする実験を実施する予定である。 一方,土壌中の水・温度条件ならびにそれが影響する炭素動態と関わると考えられる石灰や有機質肥料の施用,地表面火災による土壌炭素の変質,土壌の透水性空間分布に着目して実験結果の解析を行った。その結果,家畜廃棄物由来の有機質肥料の施用が土壌中の重金属イオンの移動性さらには汚染の拡大を促進する可能性があること,下層土の透水性から圃場の水循環が評価できる可能性があることを明らかにした。 森林火災などの地表面における加熱イベントが土壌中にどの程度及ぶか,また,初期水分量等の燃焼条件によって土壌中の熱条件が異なること。土壌中の熱条件が異なると,土壌炭素の変質の程度が異なり,土壌の撥水性の発現も変わることが示唆された。これは,土壌水分によって火災時の土壌撥水性発現が決まり,また土壌撥水性の程度によって土壌水分量の特徴が決まるというように土壌の撥水性と土壌水分量が相互フィードバック関係にあることを示唆している。この結果は,温暖化対策として炭素を蓄積した高有機質土壌中の炭素動態に深く関わる土壌水分条件の形成に寄与する土壌の撥水性の発現機構について新しい知見である。
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