Research Abstract |
地表面限界領域で生じている物質循環の一つとして土壌と大気の境界におけるCO2の 動態に着目した。土壌CO2フラックスは,チャンバー法などで適宜測定するだけでは,その特徴がわからない。そこで、多点ガスサンプリング装置を作成して,培養実験中の各試料からのCO2フラックスを精密に得ることを試みた。 対象とするCO2動態としては,農地土壌改良に多用される炭酸Caと有機堆肥を施用した土壌における炭素循環を取り上げた。これは,1)広範に行われている営農行為であること,2)炭酸Ca,有機堆肥の施用によって土中CO2濃度が変化し,その結果,土中における他の無機塩(Na,K)の動態が変わる可能性が示唆されていること,が理由である 通常の数gのかく乱試料を用いた培養と,150cc程度,1.5L程度の容器に土を充填し,最上端からのみCO2を放出させる培養を行い,CO2フラックス等のモニタリングをした。堆肥の施用によって,土壌からのCO2フラックスは増大する。これは,特に潅水直後に著しい。しかし,通常,室内インキュベーション試験として行われる少量の土壌を使用した培養実験や土壌量を10倍以上に増量した150cc容器に充填した培養実験では野外の原位置におけるようなCO2濃度,フラックスを生じなかった。すなわち,従来の室内インキュベーション実験では,実際の地表面限界領域における炭素動態の参考にならない可能性があることがわかった。これを踏まえて,今後は,より大きな土壌試料を用いて同様の培養・ガスモニタリング実験を行い,試料サイズの影響を検討することを考えている。
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