Research Abstract |
地表面限界領域では,根圏における水,物質移動が,重要であるにも関わらず,解明が進んでいない課題である。さらに,土壌から大気へのCO2の発生や,炭酸塩を介した土中の無機塩の移動・集積への影響など,根の活動の物質循環への影響については明らかにすべき点が多い。そこで,検討を重ねてきた小型精密水分センサーを活用した土壌水分時空間変動モニタリングシステムを構築して,植物を栽培する中で,土壌中の変量の連続モニタリングを試みた。側面に水圧センサー,小型水分センサー,温度センサーをマトリックス状に配置した薄型土槽を作成し,これで,緑肥用ひまわりを栽培した。 また,並行して実際に営農する圃場を借用し,粘性土,砂壌土という透水性,保水性の大きく異なる土壌について,作物栽培中の温度,水分の時空間変動のモニタリングを行った。作物としては大麦と大麦収穫後に播種する大豆が対象である。 薄型土槽を用いた室内実験では,ある程度の精度でモニタリングが可能であることを示したが,センサーをより小さくするとデータロガーの読み取りが不安定になるなど,今後改良すべき点も明らかになった。これは,測定の頻度を減らすことで,精度の向上を図ることが可能であると考えられる。 原位置におけるモニタリングでは,粘性土の地表面限界領域の水分動態において,根の吸水が非常に大きく影響すること,また,そのため,作物ごとの根系を考慮したモデルが,より精密な水分動態予測に必要であることが明らかになった。ただし,砂壌土においては,作物の栽培は同様であったが,粘性土ほどは根の吸水による影響が顕在化しなかった。 凍結・燃焼など極限現象が水・化学物質などの移動現象に与える影響については,凍結土壌中の液状水の移動について,検討を進め,凍結によって大きく透水性が低下する程度を評価するインピーダンスファクターを実験的に得る手法を提案した。
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