Research Abstract |
本研究は,ストックマネジメントのための土構造物,特に溜池の性能劣化予測システムの確立を目指すものである.本研究は,次のステップに従い,研究を進めている.ステップ1:非破壊検査による溜池堤体の計測システムの構築,ステップ2:溜池性能劣化の総合的診断技術の確立,ステップ3:溜池性能劣化モデルの構築,ステップ4:溜池性能劣化予測モデルの再構築,ステップ5:GISによる溜池性能劣化予測システムの開発である.本年度は,上記5ステップのうち,「ステップ1非破壊検査による溜池堤体の計測システムの構築」として,溜池の満水時と水位低下時に比抵抗電気探査と高精度表面波探査を実施し,堤体の地盤強度,土質および貯水による含水比の変化を捉えた,また,複数の物理探査結果を有機的に結びつけるために,自己組織化マップを導入し,溜池堤体内の状態を把握できるようにした.自己組織化マップはニューラルネットワークの一種で,高次元のデータを持つ入力データを,類似度によって二次元のマップ上に写像し,データ間のユークリッド距離が近いほど2つのデータは類似していると判断する.自己組織化マップは教師信号を必要とせず,データ中の特徴を自動的に抽出できるため,その導入により合理的な計測システムが構築できる.さらに,「ステップ2:溜池性能劣化の総合的診断技術の確立」として,モンテカルロフィルタを用いた地盤劣化領域の推定手法を開発した.モンテカルロフィルタは感度行列を計算する必要がなく,非線形な物理現象をそのままの形で定式化することができるため,溜池の性能劣化を評価する際に極めて有効である.
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