2011 Fiscal Year Annual Research Report
地球温暖化に向けた農業用水マネジメントの新たな制度的手法の開発
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21380148
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Research Institution | Gakushuin Women's College |
Principal Investigator |
荘林 幹太郎 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (10460122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 幸雄 岩手大学, 農学部, 准教授 (90323477)
竹田 麻里 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教 (60529709)
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Keywords | 政策研究 / 水資源 / 環境調和型農業 / 水リース市場 / レファランスレベル |
Research Abstract |
地球温暖化に伴い増大すると懸念される農業経営リスクのなかで、農業水利施設の更新事業にかかわる長期債務は農家にとって大きな財務リスクになる懸念がある。本研究においては、そのリスクを減じつつ安定的な農業水利施設の保全を行うための新たな政策として、『事後的料金制度』を提案する。用水の使用実績に応じて農家が費用を負担する事後的料金制度を適用することができれば、農家には長期債務は発生しないことから、財務リスクを著しく軽減することが可能となる。一方で、この方法は農業水利施設の維持管理更新を農家からの費用徴収で実施する土地改良区の財務安定性を棄損する懸念がある。それへの対応として、土地改良区による水利権リース市場の導入をセットで整備することが必要となる。 本年度においては、(1)事後的料金制度の農業経営に与える影響分析、(2)水利権リース市場の役割分析、(3)新たな総合的政策の有効性検証、を行った。(1)については、事後的料金制度を導入した場合、維持管理費や更新事業費の農家負担を軽減するために農家には節水インセンティブが作用することとなる。しかしながら、節水限界費用が節水量の増加に伴う維持管理・更新事業費負担の増加分よりも大きければ、節水インセンティブは政策的効力を発揮しない。このことからし節水限界費用の定量的推計が重要であり、それをアンケート調査等により試みた。その結果、節水限界費用は、事後的料金制度の制度設計を有意味とする範囲内に収まる可能性が高いことを明らかにした。(2)については、カリフォルニア州や豪州の制度分析をもとに、事後的料金制度のもとでの水利権リース市場の役割を分析するとともに、国内におけるアンケート調査を実施した。その結果、たとえば、カリフォルニア州のかんがい区については、節水に伴う水利権のリース収入と、節水による土地改良区のかんがい料金徴収の減少が相殺関係にある場合があることが明らかになった。(3)については、国内の大規模な5土地改良区の理事長等と、米国カリフォルニア州のかんがい区副理事長、豪州のかんがい用水専門家によるワークショップを開催し、事後的料金制度の導入可能性について議論を行った。
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Research Products
(1 results)