2011 Fiscal Year Annual Research Report
二次元分光吸光イメージ解析による収穫後緑色野菜の黄化速度予測に関する研究
Project/Area Number |
21380155
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牧野 義雄 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (70376565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川越 義則 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (80234053)
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Keywords | ポストハーベスト工学 / 緑色野菜 / 分光分析 / 非破壊検査 |
Research Abstract |
青果物は収穫後、生命活動を継続して行うことに起因して、急速に品質が低下するとともに、栄養成分の損耗が著しいことが知られている。そこで本研究では、特に栄養成分の損耗が著しい緑色野菜を対象品目として、収穫後における外観品質低下(黄化)速度を、二次元分光反射イメージ解析によって非破壊かつ迅速に予測する手法を明らかにし、高品質な緑色野菜の消費者への供給を支援するシステムを開発することを目的とした。 黄化の低下要因は、緑色物質であるクロロフィルの経時的な分解とともに、黄色物質であるカロテノイドが目立ってくるためである。しかし、二次元分光反射イメージでクロロフィル分解を追跡するには、予め反射スペクトルからクロロフィル濃度を算出するための検量線を作成しておく必要がある。そこで、アセトン抽出法による破壊分析で経時的にクロロフィルを定量し、反射スペクトルとの関係を調べたところ、色相角とクロロフィル濃度の間に正の相関関係が認められた。この結果に基づき、外観品質を非破壊で評価する方法を確立した。 収穫直後および貯蔵中の緑色野菜をハイパースペクトルカメラで撮影し、二次元分光吸光イメージを取得した。収穫直後の分光反射イメージデータ(検量用)から、黄化速度の説明変数として有効と考えられる波長での吸光度を、回帰分析や主成分分析を利用して抽出し、これらのデータと貯蔵中の黄化速度を関連づける数学モデルを探索した。検証用データを用いた解析により、ニューラルネットワークで構築したモデル式が、黄化速度の予測に有効であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
収穫後における緑色野菜の黄化速度を、二次元分光反射イメージ解析によって非破壊かつ迅速に予測する手法を明らかにした。 また、黄化の要因であるクロロフィルの経時的な分解を反射スペクトルから算出した色相角から非破壊で評価する方法を確立した。 収穫直後および貯蔵中の緑色野菜をハイパースペクトルカメラで撮影し、二次元分光吸光イメージを取得した。収穫直後の分光反射イメージデータ(検量用)から、外観品質低下速度の説明変数として有効と考えられる波長での吸光度を、回帰分析や主成分分析を利用して抽出し、これらのデータと貯蔵中の黄化速度を関連づける数学モデルを探索した。検証用データを用いた解析により、ニューラルネットワークで構築したモデル式が、外観品質低下速度の予測に有効であることを明らかにした。 以上の結果は、交付申請時の計画に沿って得られたものであり、研究はおおむね順調に伸展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ブロッコリーを試料とした実験で、ハイパースペクトルカメラを利用した二次元分光反射スペクトル測定と、計測データのニューラルネットワークによる統計解析を組み合わせることによって、収穫直後に予め黄化速度を非破壊で予測することが可能であることは確認できた。しかし、単回帰分析や主成分分析によって入力変数を決めているため、黄化速度を予測可能な科学的根拠を示すことが困難な現状にある。 過去の研究例では、ブロッコリーの黄化は、呼吸速度が大きい環境条件下で促進されることが報告されている。このことから、呼吸に関わる酵素が黄化速度を制御している可能性が示唆される。当該酵素が細胞内小器官であるミトコンドリアの内膜に存在することが知られていることから、今後、ブロッコリーからミトコンドリアを抽出し、分光吸収スペクトルを測定することで、呼吸酵素の分光吸収特性を明らかにし、黄化速度予測に有効な光波長との関連性を検討することにより、黄化速度の非破壊予測が可能な科学的根拠を明らかにしたい。
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