2011 Fiscal Year Annual Research Report
樹木の環境応答を利用した高効率クローン苗生産の開発に関する基礎的研究
Project/Area Number |
21380157
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
渋谷 俊夫 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (50316014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩崎 修志 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (10235492)
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Keywords | 挿し木 / 発根 / 貯蔵 / ポプラ / スギ / 栄養繁殖 / 閉鎖型苗生産システム |
Research Abstract |
ボトムヒート貯蔵と閉鎖型育を行うことのできる簡易システムを用いて,スギ挿し穂の増殖を行い,従来の組織培養での増殖法との比較を行った.その結果,ボトムヒート貯蔵を1ヶ月施した後に固形培地に挿し木を行うと,30%以上の挿し穂で発根がみられたにもかかわらず,組織培養ではほとんど発根がみられなかった.このことからボトムヒート貯蔵は従来の増殖方法よりも増殖効率を向上できる可能性が示唆された.その一方で,初冬に得られた挿し穂ではボトムヒート貯蔵の効果がみられたが,夏季や晩冬に得られた挿し穂ではボトムヒート貯蔵によって挿し穂基部が壊死するなど,効果の安定性に課題がみられた.ポプラ挿し穂の葉面積を数段階に切りそろえてボトムヒート貯蔵を行った結果,ボトムヒート貯蔵では挿し穂の葉面積が大きいほど,処理後の発根が促進されることが示され,挿し穂の初期の栄養状態がボトムヒート貯蔵の効果に大きく影響を及ぼすことが示唆された.ボトムヒート貯蔵に必要なエネルギーコストを,本研究で用いた処理装置の消費電力の実測値と貯蔵庫の熱的特性などから大山・古在(1998)の方法を用いて算定した.貯蔵気温は10℃,ボトムヒート処理温度は30℃,処理期間は28日間とした.光照射は白色蛍光灯で,PPFD10μmol m<-2>s<-1>の連続照射とした.試算の結果,夏季を想定したときのボトムヒート貯蔵に必要な挿し穂1本あたりのエネルギーコストは約0.5円であった.冬季を想定した場合でも,エネルギーコストは夏季に比べて6%程度しか低減しなかった.全エネルギーコストに占める温水加温用ヒーター,空調および照明の割合はそれぞれ50%,33%および17%となり,ボトムヒート処理における温水の加温にかかるエネルギーコストが最も大きかった.したがって,ボトムヒート処理装置の実用化においては加温用温水を溜める部分の断熱性を十分に検討する必要があると考えられる.
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[Presentation] Acclimatization of grafted-cuttings with warming graft union at controlled low-air-temperature2011
Author(s)
Shibuya, T., Shimizu-Maruo, K., Kawara, T., Tsuchiya, K., Douzono, M.
Organizer
Grafting 2011
Place of Presentation
Viterbo, Italy
Year and Date
2011-10-03
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