2011 Fiscal Year Annual Research Report
寒地型牧草の温暖化耐性メカニズムの解明と量的遺伝子座の特定
Project/Area Number |
21380163
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
杉山 修一 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (00154500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 竹雄 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (10228645)
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Keywords | 気候温暖化 / 耐暑性 / イネ科牧草 / クロロフィル蛍光 / 酸化ストレス / 葉の構造 / 種間差異 |
Research Abstract |
主要な寒地型イネ科牧草であるペレニアルライグラス品種を用いたこれまでの研究から,温暖化による牧草種の衰退の主要な原因は長期的な高温に曝されることで生成された活性酸素種による酸化ストレス障害であることが分かった。そこで,ペレニアルライグラス以外のイネ科牧草種においても,温暖化ストレス障害に同じようなメカニズムが働いているかを明らかにするために,日本で用いられている寒地型イネ科牧草15種間の温暖化ストレス耐性と活性酸素生成による酸化ストレス障害の関係を調べた。得られた結果は以下のとおりである。 (1)これまでの検定方法と同様に,ポット条件で育成した植物をグロースチャンバー内で36℃/30℃(昼/夜)の条件で40日間生育し,光化学系IIの機能障害を表すクロロフィル蛍光(Fv/Fm)を定期的にモニターすることでストレス障害の種間差異を調査した。得られた結果は以下のとおりである。 (1)温度処理開始後20日後に2種が,40日後には6種が機能低下を示した。Fv/Fm値は葉の過酸化水素濃度とは関係は認められなかったが,脂質の過酸化度と負の有意な相関(r=-0.61*)を示し,温暖化ストレスが酸化ストレス障害に起因することが裏付けられた。 (2)温暖化ストレス耐性は,活性酸素消去に関わる酵素活性(APX)より活性酸素を生成に関わる葉の構造,例えばSLA(面積当たりの葉の重さ)や葉の密度,含水率と有意な相関を示した。これらの結果は,ペレニアルライグラスの品種間に見られた傾向と一致し,イネ科牧草の温暖化ストレス耐性には葉の構造の改良により,酸化ストレスの生成を抑えることが有効であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
寒地型牧草の温暖化ストレス障害を引き起こす生理的メカニズムの解明が」すすんだこと。また,非破壊的なストレス障害の測定方法が確立され,ペレニアルライグラスのQTL系統の解析を進めていること。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の知見をもとに,ペレニアルライグラスを始めとする温暖化耐性系統を育成し,品種改良につなげる。
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Research Products
(1 results)