2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21380175
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
金子 浩之 独立行政法人農業生物資源研究所, 動物発生分化研究ユニット, 上級研究員 (60343993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 和弘 独立行政法人農業生物資源研究所, 動物発生分化研究ユニット, 上級研究員 (20360456)
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Keywords | 応用動物 / 発生・分化 / 発生工学 / 原始卵胞卵 / 異種間移植 / 胚発生 |
Research Abstract |
マウス体内で発育させたブタ原始卵胞卵由来の発育卵の胚発生能は極めて低い。しかしながら、これまでの成果から、マウスから回収したブタ卵に、ブタ体内で発育した卵を用いて作製した細胞質小片を3個融合させると(融合卵の作製)、その後の胚発生能が著しく改善することが明らかとなった。細胞質小片の作製時には、褐色および透明な細胞質小片の2種類が作られるが、これはミトコンドリア等の細胞質内小器官の量の違いによるものである。一方、近年、受精後の胚発生能は卵細胞質内のミトコンドリア含量との関連が高いことが示唆されている。そこで今年度では、原始卵胞卵に由来する回収卵に、細胞小器官を多く含んだ褐色の細胞質小片、あるいは細胞質小器官の少ない透明な細胞質小片を3個融合させ、体外受精後の胚発生能を比較解析した。 21匹のヌードマウスから520個の直径115μm以上のフルサイズに達したブタ卵が回収され、体外成熟後155個がMII期に移行した(成熟率30%)。屠場ブタ卵から遠心操作によって褐色および透明細胞質小片を作製し、それぞれ3個ずつ回収卵に融合させた。褐色および透明細胞質小片のそれぞれの融合率(融合卵の作製率)は、74%(59/80個)および54%(13/24個)であった。体外受精後、褐色細胞質小片からなる融合卵は59個のうち3個が胚盤胞へ発生し(胚発生率5%)、透明細胞質小片からなる融合卵は13個のうち5個が胚盤胞へ発生した(胚発生率38.5%)。胚盤胞の細胞数は20~50個であった。マウス由来のブタ卵の胚発生率が1%以下であった結果(Kaneko et al.2006)に比較して、融合卵の作製によって胚発生率は明らかに増加した。しかしながら、当初の予想とは異なり、細胞小器官が少ない透明細胞質小片を融合した場合において、褐色細胞小片の融合時より高い胚発生率を示す傾向があり、発生率の改善にはミトコンドリア量の変化ばかりではなく、ミトコンドリアの機能変化あるいはATP等の細胞質成分の関与も窺われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
融合卵の作製によって、マウス体内で発育させたブタ卵の胚発生能は明らかに改善した。しかしながら、当初の予想とは異なり、発生率の改善にはミトコンドリア量以外の因子の関与も示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
ミトコンドリアの機能的な変化が卵の成熟と受精、および胚発生に重要な役割を果たしている知見が集積しつつある。一方、L-カルニチンは脂肪酸をミトコンドリア内部に運搬し、ミトコンドリアの活性を上昇させる物質である。また、マウス体内で発育させたブタ卵の細胞質にはミトコンドリが少ないことを予備的に明らかにしている。そこで、簡便な発生能改善法の開発を目的として、マウスから回収したブタ卵の成熟培地にL-カルニチンを添加しミトコンドリアの活性を上昇させた時の、発生能の変化を解析する。
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Research Products
(2 results)