Research Abstract |
肝臓の繊維化マーカーに関する研究:犬の慢性肝炎の繊維化マーカーの検討として、ヒト、マウスで繊維化との関与が示唆されている9つの遺伝子(PDGFB,PDGFD,MMP2,TIMP1,THBS1,COL1A1,COL3A1,TGFB1,TGFB2)の発現量を定量PCRによって解析した。9つの遺伝子は組織学的な繊維化の程度と有意に相関しており、腹水や黄疸を呈する予後不良群ではさらに発現量が増加していることが判明した。 胆嚢の運動性と胆泥症・胆嚢粘液嚢腫との関連性に関する研究:これまで獣医領域では胆嚢疾患時の運動性について全く評価されていないため,まず超音波検査を用いた簡易検査を開発した。それを用いて症例での検討を行ったところ,胆嚢粘液嚢腫だけでなく,胆泥症でも運動性が低下していることが示され,胆道系疾患の評価に今後有用であることが示唆された。 肝疾患の重症度と炎症マーカー,栄養マーカーとの関連性に関する研究:重症度マーカーとしてヒトで予後不良因子ともなりうる新たな炎症マーカーとして注目されているhigh-mobility group box 1(HMGB1)と,動的栄養指標として注目されている,トランスサイレチン,トランスフェリンの有用性について検討した。犬でもHMGB1は炎症マーカーとして,トランスフェリン値の低下は栄養状態の悪化マーカーとして有用であることが示されたが,重度肝疾患の予後との関連性については症例数が少なく明らかな結果とはならなかった。 犬の肝結節性疾患のCT所見に関する研究:今回の科研費研究で,すでに超音波造影における犬の肝結節性病変の特徴について評価したが,CT造影でも肝細胞癌の動脈相における特徴的な辺縁パターンなどが明らかになり,超音波造影とともに非侵襲的な肝疾患評価として有用であることが示された。 肝臓リンパ腫の新規診断法としてのGeneScan解析:PCRに基づいてT細胞受容体のクローナリティ解析を GeneScanを用いて行ったところ,猫の肝臓リンパ腫症例の診断に極めて有用であることが示された。
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