2011 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯林再生基盤としてのアカシア早生樹の大量増殖および不稔化技術の開発
Project/Area Number |
21380196
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
三位 正洋 千葉大学, 大学院・園芸学研究科, 教授 (30093074)
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Keywords | 林木 / バイオマス / 形質転換 / 大量増殖 / 組織培養 / 遺伝子組換え / 染色体倍加 / 熱帯林再生 |
Research Abstract |
1.前年度で確立したAcacia mangiumとA.auriculiformisの種間雑種の増殖条件を複数の優良系統の茎頂培養に適用が可能であることを確認した。また、茎頂組織からのカルス誘導およびカルスからのシュート形成条件を確立した。さらにこのシュートの二次的な増殖を茎節切片による継代培養を行って、得られたシュートにDNA含量のレベルで変異のないことを、フローサイトメーターで確認した。 2.前年度に引き続き、A.mangiumの実生由来のカルスや苗条原基集塊を対象に、Agrobacterium tumefaciensのEHA101(pIG121Hm)菌株を用いて形質転換の可能性を検討した。その結果、腋芽の茎切片を接種材料にして得られたハイグロマイシン抵抗性でGUS遺伝子の発現したカルスから発生した不定芽原基は発達せずに褐変枯死した。その結果を受けてさらに、同様な手法でハイグロマイシン抵抗性カルスを作出したが、不定芽原基を得るには至っていない。しかし、同時並行で行っていた近縁種のA.gonocladaでは形質転換カルスからシュートが1本得られた。 3.前年度アミプロフォスメチル処理で作出した4倍体について、茎節切片培養による増殖が可能なことを確認した。また、2倍体シュートの培養物について、笑気ガスによる倍加条件を検討した結果、現在までに2倍体と4倍体のキメラ個体が得られており、さらに完全な倍加条件を検討中である。なお、本研究開始時にすでに得られていた4倍体をマレーシアの植林地に試験栽培しているが、まだ開花は確認されていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アカシアの大量増殖に関する技術開発は順調に進行し、不稔の3倍体を作出するための前提である4倍体の作出も行われ、すでに現地に植栽してあるが、同時に植えた2倍体に比較して開花が遅れており、交配するまでに至っていない。また、遺伝子組換えによる不稔化遺伝子の導入に関しては、遺伝子導入には成功したものの、形質転換組織から得られた不定芽原基はその後の発達が見られず植物体再生が困難であり、研究期間内における不稔化遺伝子の導入個体作出は困難と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子組換えに関する研究が、不定芽再生の困難性という点で行き詰まっているが、形質転換の効率自体も極端に低い。この大きな原因はアグロバクテリウムの感染が困難というよりも、感染後早期に導入遺伝子が不活化されており、それが選抜されてくるカルスの率を低くしている。現在、プロモーターを従来のCaMV35SからrolC等数種のプロモーターに変更したもので形質転換を試みている。また、選抜に用いているハイグロマイシンが不定芽の分化と発達を阻害している可能性が高いため、選抜薬剤としてビスチリパックを用いるため、専用のプラスミドを構築し、形質転換実験を開始している段階である。研究期間内での不稔化遺伝子の導入は困難であっても、アカシアにおける効率の良い形質転換方法を確立すべく今後の研究を展開していきたい。
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