2011 Fiscal Year Annual Research Report
セルロースの酵素分解を促進する細菌由来黄色色素の構造と機能および合成遺伝子の探求
Project/Area Number |
21380197
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
粟冠 和郎 三重大学, 大学院・生物資源学研究科, 教授 (20154031)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗冠 真紀子 三重大学, 大学院・生物資源学研究科, 研究員 (00422882)
|
Keywords | Clostridium thermocellum / 黄色色素 / セルラーゼ / セルロソーム / セルロース分解 |
Research Abstract |
Clostridium thermocellumをはじめとするセルロース分解性細菌は黄色色素を生産することが知られており、セルロース分解過程における機能と構造を明らかにすることを目的として研究を行った。微結晶性セルロース(アビセル)を炭素源としてC.thermocellumを培養し、セルロース残渣および菌体より100%アセトンを用いて黄色色素を抽出した。抽出液をアビセルと混合した後に水を加えることにより黄色色素をアビセルに結合させ、各種セルラーゼの反応用基質とした。セルラーゼとしてC.thermocellum由来の天然セルロソームを用いた場合、黄色色素を結合した基質では、色素を結合していない対照の基質に比べ約3倍の分解性を示した。黄色色素を生産しない変異株を単離し、黄色色素の抽出とアビセルへの結合の操作を行い、その分解性を調べると、対照との差は見られず、黄色色素がセルロソームのセルロース分解力を高めていることが確かめられた。C.thermocellum由来ファミリー3糖質結合モジュール、Clostridiumjosui由来のコヘシン、C.thermocellum由来のタイプIおよびタイプIIコヘシンを連結したキメラ骨格タンパク質を作製し、それぞれのコヘシンに対するドックリンを有するC.thermocellum由来のセルラーゼCe19K、Ce18AおよびCbh9Aを用いてミニセルロソームを作製した。ミニセルロソームのセルロース分解力も黄色色素により約2.5倍高められた。単独のセルラーゼを作用させた時、エキソ型の活性を持つCe19KおよびCbh9Aの活性は約2倍高められたが、エンド型セルラーゼであるCe18Aの活性は逆にやや抑制された。C.jasui由来Ce19EとPaenibacillus barcinonensis由来Ce148Cを含むミニセルロソームの活性は、黄色色素の影響を受けなかった。糸状菌Trichoderma reeseiのエンドグルカナーゼEGIIの活性は黄色色素により数割高められたが、セロビオヒドロラーゼの活性はやや抑制された。原子間力顕微鏡観察の結果では、黄色色素の結合による結晶性セルロースの構造変化は認められなかった。光および酸素により黄色色素は構造変化を起こすため、構造決定には至っておらず、なお検討中である。
|