2011 Fiscal Year Annual Research Report
“土着"天敵とは何か? 遺伝子交流からのアプローチ
Project/Area Number |
21380201
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Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
日本 典秀 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター・病害虫研究領域, 主任研究員 (80370675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 栄二 近畿大学, 農学部, 教授 (30355549)
安部 順一朗 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 近畿中国四国農業研究センター・水田作研究領域, 主任研究員 (20450330)
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Keywords | 昆虫 / 環境 / 遺伝 / 生物的防除 / 天敵 / ショクガタマバエ / DNAマーカー / 個体群構造 |
Research Abstract |
土着天敵とは何かを遺伝子交流の観点から解明するために、重要農業害虫アブラムシ類の捕食性天敵であるショクガタマバエとカブリダニをモデルケースとして、DNAマーカーの開発と、それを利用した野外における個体群構造の解明を行い、害虫防除と野外天敵個体群の遺伝的保全の両立を目指す土着天敵利用の指針を得る。 本年度は、一昨年度に採集したショクガタマバエ個体群の空間的遺伝的構造を、開発したマイクロサテライトマーカーおよびミトコンドリアハプロタイプで解析した。その結果、鹿児島県薩摩半島には少なくとも17のミトコンドリアハプロタイプが分布するが、大きく2つのクレードに分かれた。片方のクレードには一つのハプロタイプだけが見つかり、生物農薬として市販されているものに近似していたが、塩基配列は異なっていた。どちらのクレードも広く分布しており、土着のものであると考えられた。また、マイクロサテライトによる解析の結果、本種の移動分散範囲は、かなり広いものと推察された。 ケナガカブリダニにおいては、露地キク圃場周辺の個体群の遺伝的構造をマイクロサテライトマーカーを用いて明らかにした。昨年度解析した木本性のチャと異なり、攪乱の多いキク圃場では明確な個体群構造が見られず、広範囲にわたって移動分散が起こっている可能性が示唆された。 これら複数種の土着天敵の解析から、直接的・間接的移動分散範囲は圃場を越えて広がっていると考えられ、広範囲での遺伝子交流・均一化が起こっていると示唆された。とくに、ショクガタマバエの低頻度なハプロタイプが広く保存されていることからも、ショクガタマバエではメタ個体群構造による事実上の遺伝子プールは県域にわたる広いものであると推察された。
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Research Products
(17 results)