2010 Fiscal Year Annual Research Report
ナノマテリアル暴露が次世代の脳神経系に及ぼす影響とその克服に関する研究
Project/Area Number |
21390037
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
武田 健 東京理科大学, 薬学部, 教授 (80054013)
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Keywords | ナノ粒子 / 酸化チタン / 酸化亜鉛 / 胎仔期曝露 / モノアミン代謝 / 脳神経系 / ドーパミン |
Research Abstract |
我々は、酸化チタン(TiO_2)ナノ粒子が妊娠期の母から仔に移行し、出生後の成長期にも脳内に取り込まれた状態で残ること、病理学的に、また、機能的に様々な影響が認められることを世界に先駆けて明らかにした。 TiO_2ナノ粒子曝露群の脳の各部位について病理組織学的検討をおこなったところ、6週齢雄の脳末梢血管に多発性の微小梗塞の所見が認められ、嗅球の僧帽細胞がカスパーゼ-3(アポトーシスのマーカー)陽性細胞になっていることが認められた。この結果、TiO_2を妊娠マウスに投与するとTiO_2は胎盤を経由して胎仔に移行し、未発達な血液脳関門を通過し、脳各部位に残ること、脳の機能に影響を及ぼすことが示唆された。ドーパミンやセロトニンなど神経伝達物質のモノアミン系の代謝異常も認められた。さらに、網羅的・経時的遺伝子発現解析の結果においても様々な異常が認められた。 一方、酸化亜鉛(ZnO)ナノ粒子も透明度が高く、紫外線を効率的に反射することから化粧品に汎用されている。酸化チタンの他に妊娠期におけるZnOナノ粒子の曝露が出生仔の脳内モノアミン神経系に及ぼす影響を調べた。HPLCを用いて脳内モノアミン及び代謝物を定量した結果、ZnOナノ粒子曝露群の複数の脳部位においてドパミン、セロトニンの代謝物や代謝回転の有意な増加が認められた。これらの結果から、ZnOナノ粒子胎仔期曝露はモノアミンの代謝物量に変動を及ぼすことが示唆された。本研究により、TiO_2及びZnOナノ粒子はその利便性から化粧品に汎用されているが、曝露時期及び量によっては次世代の脳神経系の健康状態に影響を及ぼす可能性が示唆された。 TiO_2及びZnOナノ粒子の胎仔期曝露による生体影響や中枢神経系への影響に関しては報告がなく、本研究はナノ粒子の健康影響を示す研究として大きな意味を持つと考えられる。
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Research Products
(21 results)