2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナノマテリアル暴露が次世代の脳神経系に及ぼす影響とその克服に関する研究
Project/Area Number |
21390037
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
武田 健 東京理科大学, 薬学部, 教授 (80054013)
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Keywords | ナノ粒子 / 酸化チタン / 胎仔期曝露 / 脳神経系 / 網羅的遺伝子発現解析 / 発達障害 / データマイニング |
Research Abstract |
酸化チタンナノ材料(ナノTi02)の曝露を胎児期に受けたマウスの脳に生じる影響(次世代影響)を、cDNAマイクロアレイ法を用いた網羅的な遺伝子発現解析を基にして検討した。周産期(胎齢16日~生後21日目)の全脳組織を遺伝子発現に供し、発現変動データからナノTi02の胎児期曝露による影響として注目すべき脳領域の抽出を行った。その結果、胎齢16日から生後2日目の早い時期は影響が線条体、嗅球、海馬と限局的であるのに対し、生後7日から21日目と成長するに伴い、ナノTiO2胎児期曝露の影響が大脳皮質、視床下部、小脳、中脳のドパミン関連領域に広範に広がっていくことが明らかになった。この結果は、同様の実験で脳内モノアミン量を指標にして評価した報告(Takahashi et al. J Toxicol Sci, 2010)と一致しており、影響発現機序として脳領域の観点から新たな知見を示したものである。このデータは、ナノ材料の曝露による影響発現の克服法を考える上で重要である。さらに、ここで活用したデータマイニング方法は我々が新規に開発したもの(Umezawa et al. 2009 ; Shimzu et al. 2009)をさらに改良したものである。この解析法は、周産期のマウスのように量的に限られた組織試料から、注目すべき領域や細胞群の情報を抽出できるものとして有用であることが示唆され、様々な生物学研究に応用されることが期待される(Umezawa et al.論文投稿中)。ナノ粒子曝露群の脳の各部位について病理組織学的検討をおこなったところ、6週齢雄の脳末梢血管に多発性の微小梗塞の所見が認められた。先にTi02ナノ粒子は胎盤を経由して胎仔に移行し、未発達な血液脳関門を通過し、脳各部位に残ること、嗅球の僧帽細胞がカスパーゼ-3(アポトーシスのマーカー)陽性細胞になっていることを明らかにしたが(Takeda et al 2009 J. Health Sci.)、本研究によりさらに脳の機能に様々な影響を及ぼすことが示唆された。
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