2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヌクレオカインHMGB1由来ペプチドの脳血管透過性亢進作用の機序解明
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21390071
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
西堀 正洋 Okayama University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (50135943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 英夫 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (60335627)
劉 克約 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (40432637)
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Keywords | HMGB1 / 脳血管透過性 / 脳浮腫 |
Research Abstract |
抗体医薬の有効性から脳梗塞治療の標的分子として同定したHMGB1の内部配列に対応する15アミナ酸残基長のペプチドをHMGB1の全長にわたって人工合成した。合成ペプチドは、5アミノ酸残基長ずっずらした、重複ペプチドとして設計した。一方、HMGB1とその受容体候補の一つであるReceptor for Advanced Glycation Endproduct (RAGE)の細胞外ドメイン(sRAGE)を組み換え体蛋白として発現・精製し、マイクロタイタープレート内で受容体・リガンド結合実験系を構築した。HMGB1をマイクロタイタープレート上に固相化し、液相にヒスチジンタグ付sRAGEを添加し、一定時間インキュベートした後、フリーのRAGEを洗浄で除き、結合したsRAGEをNiNTA-HRPで検出して定量化した。さらに、RAGEの他のリガンドの一つである、AdVanCed Glycation Endproduct (AGE-2, AGE-3)とsRAGEの結合実験系を確立した。この2つの結合実験系を用いて40種類の合成ペプチドの結合に対する影響を検討したところ、3種類のペプチドに興味深い活性が見出された。その一つは、AGE-2/3-sRAGE結合を著明に阻害する活性を有するペプチド1であった。このペプチド1を5mg/kg, i. v.の用量で、ラット中大脳動脈閉塞2時間後、再灌流時に投与すると、通常脳梗塞形成がまだ生じない再灌流後6時間の時点で、すでにかなりの体積の梗塞巣が完成することがわかった。動脈血圧の測定で、このペプチドの静脈内投与の直後から、約1時間にわたる血圧低下効果が観察された。また、対照ペプチドとして合成した鏡面配列のペプチドにおいても、同様の持続性の低血圧誘導と著明な脳梗塞の増悪が明らかとなった。これらの結果は、その受容体関連機構についてはさらに検討が必要であるが、両ペプチドによる動脈血圧低下が、局所血流のさらなる低下を招き、その結果として数時間後に生じる脳壊死を加速したものと推察された。HMGB1の脳血管透過性亢進作用をin vitroで検討するモデルとして、脳血管内皮細胞、アストログリア細胞、ペリサイトの共培養系からなる人工血液脳関門(人工BBB)培養系を導入した。ヒト組み換え体HMGB1を血液側あるいは脳側から添加することにより、脳血管透過性の定量的測定を開始した。
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