2010 Fiscal Year Annual Research Report
炎症による発癌における転写因子ファミリーIRFの役割に関する研究
Project/Area Number |
21390089
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
田村 智彦 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (50285144)
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Keywords | 細胞・組織 / 遺伝子 / 発現制御 |
Research Abstract |
近年、慢性炎症によってがんが引き起こされうること、そしてその際転写因子NF-κBががんの増悪に深く関わっていることが示されている。本研究では、自然免疫刺激を含む多くの共通した刺激でNF-κBと同時に活性化されるInterferon Regulatory Factor (IRF)転写因子ファミリーが、感染防御においてはNF-κBと協調する一方、がん抑制に関しては拮抗作用を持つ可能性に着目し、遺伝子欠損マウスを用いて細胞レベルの解析のみならず発がんモデル系を用いた生体レベルの解析を行なうものである。平成21年(初年)度は、細胞レベルの解析によって自然免疫シグナルがNF-κBを介するanti-apoptoticなシグナルとともにIRFを介するpro-apoptoticなシグナルも送っていることを示すデータを得た。平成22年度においては、生体レベルの解析としてazoxymetane腹腔内注射とdextran sodium sulfate(DSS)含有水投与による炎症性腸疾患由来の大腸腫瘍形成実験を、種々のノックアウトマウスを用いて行なった。その結果は、I型インターフェロン(IFN)受容体、IRF1、IRF5、あるいはIRF1,5両方が欠損すると、炎症そのものが増悪し、腫瘍形成もそれに伴って軽度増加するというものであり、IFN系による抗炎症という最近注目されつつある作用を示唆するものの、炎症由来のがんにおけるIRFやIFN系の抑制能を評価することは困難であった。なお、研究過程において、腸内寄生虫感染が、DSS投与による急性並びに慢性腸炎、さらには引き続いて生じる大腸腫瘍形成をほぼ完全に抑制するという、極めて興味深い知見を得ており、新たな展開を見せている。
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Research Products
(4 results)