2011 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス応答キナーゼMTK1による細胞死、細胞増殖制御機構と癌におけるその異常
Project/Area Number |
21390090
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
武川 睦寛 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (30322332)
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Keywords | シグナル伝達 / ストレス応答 / がん / 蛋白質リン酸化 |
Research Abstract |
ストレス応答MAPK情報伝達経路は、様々な環境ストレス刺激によって活性化され、細胞周期停止やアポトーシス、免疫応答の制御に中心的な役割を果たしている。また、この経路の異常が癌や自己免疫疾患の発症に深く関与する証拠が蓄積されている。しかしながらストレス応答経路の活性制御機構には不明な点が多く、その解明は癌の病因、病態の理解、および新規治療法開発の観点からも必要不可欠である。申請者は、これまでにストレス応答MAPK経路の主要なヒトMAPKKKであるMTK1をクローニングし、さらにMTK1の制御ドメインに結合して、活性化因子として機能する3つのGADD45関連分子を同定してきた。本研究では、GADD45-MTK1経路による細胞増殖制御機構の解明を目的とし、MTK1と細胞内で特異的に結合して複合体を形成する蛋白質分子のスクリーニングを行った。その結果、新たなMTK1結合分子として、G2/M期の進行に重要なM期キナーゼ分子が得られた。生化学的実験により、実際にこの分子とMTK1が細胞内でストレス刺激依存的に結合すること、さらにMTK1がM期キナーゼ分子をin vivoで直接リン酸化して活性化することを見出した。そこでさらに、MTK1によるストレス依存的なM期キナーゼ分子の活性化が、細胞のストレス応答に与える影響を解析したところ、このM期キナーゼ分子が、ストレス誘導アポトーシスを阻害する作用を持つこと、また、ストレス環境下での染色体安定性の保持に関与することを見出した。また複数の癌細胞において、このM期キナーゼの制御異常が起きていることを明らかにした。以上の結果から、MTK1-M期キナーゼ・シグナルがストレス環境下での細胞運命決定と染色体保持に寄与し、またその異常が発癌に関与する可能性が示唆された。
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