2011 Fiscal Year Annual Research Report
悪性軟部腫瘍におけるシグナル伝達分子異常の解析と分子標的治療の可能性の研究
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21390107
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小田 義直 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (70291515)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田宮 貞史 九州大学, 大学院・医学研究院, 准教授 (60284486)
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Keywords | 悪性軟部腫瘍 / mTOR / 悪性末梢神経鞘腫瘍 / 滑膜肉腫 / 粘液線維肉腫 / 類上皮肉腫 / 孤立性線維性腫瘍 / 平滑筋肉腫 |
Research Abstract |
本年度は下記の6種類の軟部腫瘍についての解析を行った。 1)平滑筋肉腫:129症例および16例の転移・再発巣の平滑筋肉腫の症例についてSTAT3のSocS3以外の抑制因子、ERK1/2, PIAS3, SHP-1, -2についてウェスタンブロット法にてタンパク発現を評価し、SOCS3が主な抑制因子であることを確認した。2)滑膜肉腫:112例についてAkt, mTOR, S6, 4E-BP1のリン酸化型のタンパク量と臨床病理学的因子との相関を評価し、mTOR, 4E-BP1の活性化が予後不良因子となっていることが明らかとなった。また、29例の凍結標本においてAktkl, PIK3のmutation解析を行ったが、mutationは認めなかった。3)悪性末梢神経鞘腫瘍:135例の標本において、染色結果でAKT-mTOR系は約半数から6割の症例で、PK系は約4分の3から95%の症例で活性化していることが明らかとなった。単変量解析にて、pAKT, pmTOR, pS6RPの陽性例が有意に予後不良であった。MAPK系因子の活性化と予後との関連はみられず、本腫瘍における高悪性化には、AKT-mTOR系が関与していることが示唆された。多変量解析では、リン酸化mTOR陽性が唯一の独立した予後因子であった。細胞株6株においてmTOR阻害薬による抗腫瘍効果が実証された。 4)粘液線維肉腫:75例について、Akt, mTOR, S6RP, 4EBP1のリン酸化型のタンパクと臨床病理学的因子との相関を評価した。pAkt(65%)、pmTOR(45%)、pS6RP(41%)、p4EBP1(66%)に陽性となり、FNCLCC gradeとpmTORの発現に相関を認め(p=0.011)、腫瘍の悪性度とAKT/mTOR pathwayの活性化との相関が示唆された。5)類上皮肉腫:49症例(遠位型28例、近位型21例)について、免疫組織化学染色を用いて評価し、mTOR、S6RP、4E-BP1蛋白はいずれも高発現を認め、Akt-mTORpathwayが活性化していることが明らかになった。Aktについては、タンパク発現頻度は比較的低かったため、Aktを介さないmTORの活性化経路の存在も示唆された。予後と各タンパクとの相関は認めなかった。6)孤立性線維性腫瘍:66例についてAkt-mTOR pathway関連タンパクのリン酸化を免疫組織化学的に検討したところ50-80%においてAkt、mTOR、4E-BP1、S6RPのリン酸化が見られた。PDGFRαおよびβのリン酸化はAktのリン酸化と相関があり、腫瘍細胞のPDGF陽性とPDGFRαおよびβのリン酸化の間に相関を認めた。本腫瘍ではAkt-mTOR系が活性化しており、同系活性化の一因としてPDGFの自己分泌とそれによるPDGFRα、PDGFRβの活性化が起こっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
悪性末梢神経鞘腫瘍の研究では細胞株を用いた実験が終了し、現在論文作成中である。滑膜肉腫、類上皮肉腫においても免疫組織化学染色とウェスタンブロットのデーターの収集はほぼ終了し、今後足りないデーターを捕足していく。粘液線維肉腫と孤立性線維性腫瘍については免疫染色による解析が終了した。以上より当初の「研究の目的」はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は最終年度に当たるので、上記の悪性末梢神経鞘腫瘍、滑膜肉腫、類上皮肉腫、粘液線維肉腫および孤在性線維性腫瘍については、足りないデーターを補足して論文を完成させる。新規の対象となる腫瘍としては隆起性皮膚線維肉腫と脱分化型脂肪肉腫を取り上げ、上記腫瘍と同様な解析を行う。さらに特異的なキメラ遺伝子を有する軟部肉腫の群と、キメラ遺伝子を有しない軟部肉腫の群とで全体的にAkt-mTOR pathwayの発現状況を比較する。
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