Research Abstract |
本年度は孤立性線維性腫瘍(SFT)と隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)の解析を主に行った。SFTでは 66例についてRTK(PDGFRα, PDGFRβ, c-met, IGF-1Rα, IGF-IIR)の発現およびリン酸化(p-PDGFRα, p-PDGFRβ, p-c-met, p-IGF-1Rβ)、リガンド(PDGF-B, HGFα, IGF-1, IGF-2)の発現を免疫組織化学的に検討し、Akt-mTOR系の解析結果と併せて統計学的解析を行った。PDGFRα, PDGFRβ, c-met, IGF-1Rβのリン酸化はそれぞれ39, 52, 37.8, 16.6%の症例に見られ、PDGFRα, PDGFRβ, IGF-1Rβのリン酸化とAktのリン酸化に有意な相関が見られた。また、いずれのRTKにも受容体とリガンドの共発現とリン酸化との間に有意な相関が見られた。以上よりSFTにおいて、複数種類のRTKの系に自己分泌および活性化が起こり、その下流にシグナルが伝達されている可能性が示唆された。DFSP82例の免疫組織化学染色による解析では純粋なDFSP成分でのAKT-mTOR系蛋白は30-60%程度の症例で活性化しており、PDGFRBは50%程度の症例で活性化していた。DFSPから発生した線維肉腫(FS)成分ではDFSP成分に比較してAKT-mTOR系とPDGFRBの明らかな活性化を認めた。ウエスタンブロットの結果は免疫染色の結果と概ね一致した。DFSP例ではAKT-mTOR系の各因子(AKT, mTOR, S6RP, 4E-BP1), PDGFRB間には、正の相関を認めた。これらの解析により、DFSPでは、PDGFRBおよびAKT-mTOR系が活性化されておりFSへの悪性転化にPDGFRBおよびAKT-mTOR系の活性化が関与していることが予想された。
|