2010 Fiscal Year Annual Research Report
幹細胞システム制御におけるリン酸化シグナルの機能解析
Project/Area Number |
21390119
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 透 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (50280962)
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Keywords | 胚性幹細胞(ES細胞) / 始原生殖細胞 / Aktシグナル / リン酸化シグナル / 生殖系列 / 幹細胞システム / 中胚葉誘導 |
Research Abstract |
幹細胞は、自分自身をつくりだす「自己複製能」と、機能的な分化細胞をつくりだす「分化能」を合わせもつ細胞である。私たちは、リン酸化酵素PI3K (phosphoinositide-3 kinase)/Aktシグナルを中心としたリン酸化酵素シグナルが幹細胞システムにおいて担う機能について解析を行ってきた。前年度までに、胚性幹細胞(ES細胞;embryonic stem cell)を用いた試験管内中胚葉分化誘導家において、Aktシグナルを活性化させると、最初の生殖系列の細胞である始原生殖細胞に類似した細胞を誘導し、長期間培養できることを示した。しかし、この細胞は、生体中の始原生殖細胞とは異なり、精巣内に移植しても精子形成を行わないこと、また、培養条件を変えるとES細胞様の細胞へ戻ることから、ES細胞と始原生殖細胞の中間の分化状態にあることを示していた。 本年度は、生殖細胞として正常な分化能を有する始原生殖細胞を、ES細胞から誘導すること目標に、上記の実験系において様々なシグナル伝達経路の効果を調べた。その結果、リン酸化シグナルであるMEKシグナルとGSK3シグナルを操作することで、始原生殖細胞の特性をもつが、ES細胞様の細胞へは戻らない細胞を誘導することができた。次年度は、この細胞が、精子形成を行う分化能をもつかどうか検討する予定である。ES細胞からの機能的な生殖細胞の分化誘導は報告されておらず、発生生物学だけでなく、生殖医療においても大きなインパクトをもつと考えられる。また、引き続き、リン酸化シグナルのiPS細胞(induced pluripotent stem cell)誘導における機能を調べた。
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