2010 Fiscal Year Annual Research Report
GDNFシグナル不全に誘導される新規神経細胞死の分子機構
Project/Area Number |
21390122
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
榎本 秀樹 独立行政法人理化学研究所, 神経分化・再生研究チーム, チームリーダー (00360511)
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Keywords | RET / Bcl-XL / 腸管神経系 / 細胞死 / GDNF / ヒルシュスプルング病 |
Research Abstract |
(1) GDNF存在下で初代培養した胎児大腸神経細胞の大半は、GDNF除去後24時間以内にカスパーゼ非依存性の細胞死を起こす。このシステムを用いてカスパーゼ非依存性細胞死の経路探索を試みた。その結果、MEK阻害剤では変化がなかったがPI3Kの阻害剤により細胞死が促進された。一方、JNKの阻害により細胞死が有意に抑制されることを見出した。Bcl-XLの過剰発現が細胞死を抑制するという先行研究での結果と合わせると、1.腸管神経細胞死を誘導する上流経路は、交感神経細胞をはじめとする多くの神経細胞のapoptosisの誘導経路と非常に類似していること、2.腸管神経では細胞死経路下流に位置するカスパーゼ活性化経路が欠落している可能性、が示唆された。このため、腸管神経系におけるcytochrome c放出やApaf-1の発現・活性化について検討中である。 (2) RET発現量を減少させたマウスではカスパーゼ非依存性の腸管神経細胞死によりヒルシュスプルング病様の病態が生じる。このマウスにおいて細胞死を起こす細胞集団を特定するために、腸管の器官培養系を用いて腸管神経系の形成過程をタイムラプス観察した。その結果、腸管神経発生が正常なマウスにおいて、発生過程で小腸から大腸が血管を挟んで平行に並ぶ時期に、小腸壁から離れ血管を足場に大腸へ近道移動する細胞集団であることを見出し、この細胞集団が大腸神経系を形成することを見出した。さらにヒルシュスプルング病モデルマウスではこの細胞集団が大腸に侵入できず、他の細胞集団が補償的に大腸神経系の構成に関わっている可能性を見出した。すなわちこの補償的細胞集団がカスパーゼ非依存性細胞死を起こす可能性が示唆された(Nature Neurosciene under review)。
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