2009 Fiscal Year Annual Research Report
腸管出血性大腸菌が産生するSubABトキシンの細胞障害機構の解明
Project/Area Number |
21390127
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
野田 公俊 Chiba University, 大学院・医学研究院, 教授 (60164703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
盛永 直子 千葉大学, 大学院・医学研究院, 准教授 (20092108)
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Keywords | 腸管出血性大腸菌 / 志賀毒素 / サブチラーゼサイトトキシン / BiP / ERストレス / Bcl-2 |
Research Abstract |
O157:H7などの腸管出血性大腸菌(EHEC)は、Shiga toxin(Stx)を産生し、鮮血便を特徴とする出血性の下痢などの食中毒症状を起こす以外に、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重篤な症状を患者に引き起こすことから、我国やアメリカ合衆国など多くの国や地域において流行を繰り返しており、社会問題になっている。近年Stxを産生している菌が新たな毒素Subtilase cytotoxin(SubAB)を産生することが報告され、我々のグループでもこの毒素の重要性を考えて研究に着手した。これまでにSubABはStxの作用機構とは大きく異なり、小胞体中に存在するシャペロンBiPを分解し、その活性を阻害することによってERにストレスを起こし、細胞障害性を誘導することを報告してきた。今年度は、種々のヒトの細胞を用いて毒素に対する感受性を調べた。その結果細胞により障害作用が出現するまでの経過が数時間から2日とかなり異なることや、障害を起こすに要する毒素量が細胞により千倍近く異なることなどが明らかとなった。これは細胞表面にある毒素の受容体とも関係すると思われた。さらにはBiP分解後のシグナル伝達が、細胞により相違していることを示唆している。次にHeLa細胞を用いて細胞障害機構を調べた。この毒素はHeLa細胞にBcl-2ファミリーのBaxとBak依存的にミトコンドリアの膜を傷害してチトクロームcを放出させ、それによってcaspase依存的にアポトーシスによる細胞死が生じることなどが明らかとなった。本研究では、このSubABの詳細な細胞障害機構解析のみならず、実験動物に対する病原性を詳細に解明する事を目的として、現在マウスを用いた実験が進められ、この毒素はマウスに炎症を伴う腸管出血を起こし、死に至ることを見付けている。これらの成果はEHEC感染症の予防・治療等に新たな道を拓く事にもつながるものと確信している
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Research Products
(3 results)