2010 Fiscal Year Annual Research Report
環境化学物質の高次機能毒性評価における感受性マウス系統の有用性解析
Project/Area Number |
21390198
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
藤巻 秀和 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 室長 (00124355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ティン・ティン ウィン・シュイ 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, NIESフェロー (00391128)
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Keywords | 環境化学物質 / 脳・神経 / 免疫 / 炎症反応 / 感受性 |
Research Abstract |
本研究では、揮発性有機化合物(VOCs)のトルエンやホルムアルデヒドの曝露に高感受性を示した動物モデルを用いて異なる化学物質の曝露をおこない、高次機能への影響をトルエンなどの影響と比較することで、低濃度有害化学物質の影響解明における有用性を検証し、新たなバイオマーカーを探索することを目的としている。具体的には、免疫機能と脳内海馬の記憶・学習機能に焦点をあて、室内で殺虫剤などに含まれている農薬を用いて神経性炎症反応およびアレルギー性炎症反応の変動を探索し、これまでのVOCの結果と感受性の観点から比較検討する。 本年度は、VOCの研究で高い感受性を示した雄C3H/HeNマウスを用い、発達期に低濃度のダイアジノン投与を行い、成長期に神経、免疫機能について検討した。その結果、8週齢時に行った海馬機能に関連する新オブジェクト認知テストでは、ダイアジノン曝露群で対照群に比べ新規認知機能の低下が認められた。移動速度には差は見られなかった。NMDA受容体のmRNA発現では有意な差はみられていない。一方、脾臓における炎症反応の誘導では、3週齢時に、脾臓、胸腺重量に変化はみられなかったが、サイトカイン産生では、IL-4, TNF-α, GM-CSFで有意な抑制が認められた。ところが、8週齢時になると、脾臓、及び胸腺重量の増加が認められ、転写因子のGATA3の発現増加がダイァジノン投与群で認められた。肺におけるTNF-αやIL-1βなどの炎症性サイトカインでは差はみられなかった。これらの結果は、発達期の特定の短い時期でのダイアジノン曝露が、成長後の神経、免疫系機能に何らかの障害作用を生じていることを示している。
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