2010 Fiscal Year Annual Research Report
炎症関連疾患リスクに関与する免疫遺伝的要因と環境の分子疫学研究
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21390199
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Research Institution | Radiation Effects Research Foundation |
Principal Investigator |
林 奉権 財団法人放射線影響研究所, 放射線生物学/分子疫学部, 副部長 (70333549)
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Keywords | ゲノム / 放射線 / 炎症 / 生活習慣病 / 分子疫学 / 遺伝子多型 / サイトカイン / ケモカイン |
Research Abstract |
1. 放射線被曝による遺伝子障害感受性の遺伝的背景を検討する目的で、原爆被爆者のGPA突然変異頻度とDNA修復遺伝子の多型との関係、特に、P53BP1の下流にある遺伝子を検討した。その結果、GPA突然変異頻度とcyclin D1の遺伝子型との有意な関連が認められ、P53BP1依存性DNA修復経路に関わる遺伝子機能の個人差が、放射線誘発遺伝子障害の感受性に影響を及ぼす可能性が示唆された。 2. 原爆被爆者に対するDNA修復に重要な役割を果たす遺伝子NBNの遺伝子多型とがん発症との関係およびその関係に及ぼす放射線被ばくの影響を調べた。NBN遺伝子領域の5つのSNPサイトには1つのハプロタイプブロック(主要なハプロタイプ対立遺伝子座:CCTCGとTGCGA)が含まれていて、特に、1Gy以上の被爆者で特定のNBNハプロタイプは、胃、肺、肝臓、大腸などを含むがんのリスクの増加にかなり関連していた。それらの結果は、NBN遺伝子多型が放射線被曝と関連してDNA修復能とその結果発癌感受性の個人差に貢献するかもしれないことを示している。 3. C型肝炎ウイルス(HCV)感染初期の免疫応答、感染後の経過(特に、HCVクリアランスまたは慢性肝炎への移行)、慢性肝炎から肝細胞がんへの進展の有無には、NK細胞およびCD8陽性細胞傷害性T細胞を動員する宿主免疫反応が関与しており、感染者がどのような経路をたどるかはこの反応の個人差に一部依存していると考えられる。NKG2D遺伝子ハプロタイプとHCV持続感染および肝細胞がん発生との関係を検討した。その結果、NKG2DハプロタイプによるNK活性およびCD8陽性細胞傷害性T細胞機能の差異がHCV感染後のHCVクリアランスあるいは持続感染の経路決定に影響すること、また肝発がんにはNKG2Dハプロタイプのみならず放射線被曝も関与することが示唆された。
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