2010 Fiscal Year Annual Research Report
ソーシャルキャピタルが高齢者の要介護発生リスクに及ぼす影響に関する社会疫学研究
Project/Area Number |
21390200
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
辻 一郎 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20171994)
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Keywords | 医療・福祉 / 行動学 / 社会医学 / 情報工学 / 老化 |
Research Abstract |
[背景]我々は一般住民高齢者の横断的検討により、地域のソーシャルキャピタル(SC)と心理的苦痛が関連していることを報告している(昨年度報告書)。 [目的]地域のソーシャルキャピタル(SC)と死亡・要介護発生の関連を前向きに検討すること。 [方法]2006年12月15日時点で某O市在住の要介護認定を受けていない65歳以上男女14,774名を対象に、地域のSCと死亡及び要介護認定発生の関連を前向きに検討した。追跡は2006年12月16日~2010年11月30日までとし、SCを定義する際の地域は小学校区を用い、対象地区を36地区に分割した。地域のSCは、地域における地域活動の参加割合とした。地域活動は、次の4つを用いた。「地縁的な活動」(SC1)、「スポーツ・趣味・娯楽活動」(SC2)、「ボランティア・NPO・市民活動」(SC3)、「その他の活動(同窓会、親睦会など)」(SC4)。地区ごとに、これらの活動に週に1回以上参加している人の割合を算出し、その割合を地区のSCとした。この地域のSCの値を用いて、地区を3分位に分けた。統計モデルはコックス比例ハザードモデルを用い、最もSCが低い群を対象として、SCが高い地域での死亡、及び要介護認定ハザード比を計算した。 [結果]SC1は最小で2.2%最大で10.6%であった。しかし、SC1-4のいずれにおいても、死亡及び要介護認定リスクは有意な関連を認めなかった。SCを4分位、5分位で検討しても有意な関連は認めなかった。地域の定義を小学校区ではなくより詳細な行政区で再解析を行っても有意な関連は認めなかった。 [結論]本研究では、地域活動で測定された地域のSCと死亡・要介護認定リスクの間に有意な関連を認めなかった。昨年度報告した横断研究で認められた有意な関連は、因果の逆転を観察した可能性が考えられる。
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