Research Abstract |
かねてより長年にわたり協力を得てきた高齢双生児コホートについて、平成21年度は特に唾液及び血液の分析を中心に生活環境調査を実施した。生活環境調査としては栄養調査、運動スポーツ調査、職業、飲酒量、喫煙量、嗜好品、家族構成、居住環境、収入・経済状況、ライフヒストリー、既往歴、学歴、ソーシャルサポート、社会交流、ストレス尺度、性格テスト、人生満足度テスト、肥満度、等について大阪府及び近隣府県の居住者を対象にデータ分析を実施した。唾液の分析については、準備段階の予備実験においてDNAのメチル化分析が唾液中のRNAにより阻害されることが判明したことから、平成21年度は、血清の分析中心に実施し、DNAメチル化分析については次年度以降に実施することとした。平成21年度の血液分析では、血清アポ蛋白(Apo A-I, Apo A-II、 Apo B, Apo C-II, Apo C-III、 Apo E)の血中濃度について142組の高齢双生児を対象に共分散構造の分析のMX解析を実施し、これら血清アポ蛋白濃度の遺伝寄与率及び環境寄与率を算定した。双生児の卵生診断は、血液型9種類:ABO, Rh (C, c, D, E, e), MN (M, N), Lewis (Lea, Leb), P(P1), Duffy (Fya, Fyb), Kidd (JKa, JKb), Kell (K), Diego (Dia)を用いた。このMX解析による遺伝寄与率の算定は現在、国際的に最も広く用いられる解析手法となっている。また一卵性及び二卵性における各々のアポ蛋白の級内相関係数もペア内での類似度の指標として算定した。級内相関係数の卵性間比較では、一卵性が二卵性を全てのアポ蛋白において有為に高い数値を示しアポ蛋白の血清濃度について遺伝的関与の強いことが示唆された。また共分散分析のMX解析により算定された各アポ蛋白の血清濃度の遺伝寄与率については、Apo-AI(男:0.37,女:0.60),Apo-A-II(男:0.30,女:0.65),Apo B(男:0.32,女:0.59),Apo-C-II(男:0.61,女:0.75),Apo-CIII(男:0.00,女:0.00),Apo E(男:0.48,女:0.73)と算定された。男女別の比較では、男性で最も高い遺伝寄与率を示した項目は、Apo-C-IIであった。また女性で最も高い遺伝寄与率を示した項目は、Apo C-II(0.75)及びApo E(0.73)であった。
|