2009 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者における飲酒習慣と動脈硬化性疾患のリスクとの関連性に関する疫学研究
Project/Area Number |
21390211
|
Research Institution | Hyogo College of Medicine |
Principal Investigator |
若林 一郎 Hyogo College of Medicine, 医学部, 教授 (70220829)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸茂 幹雄 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (40333950)
中野 知之 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (00333948)
高橋 祐二 兵庫医科大学, 医学部, 非常勤講師 (20292443)
|
Keywords | 社会医学 / 加齢医学 / 飲酒習慣 / 動脈硬化 / リスク要因 |
Research Abstract |
【目的】飲酒習慣は動脈硬化性疾患発症に対して功罪両面の作用を示すが、高齢者での適正飲酒量に関する基準は提唱されていない。そこで本研究では高齢者での飲酒と動脈硬化リスク要因との関連性を検討した。【方法】健康診断の結果を用いて年齢別に飲酒と動脈硬化リスク要因との関連性を比較した。また特に高齢者では高血圧の治療歴を有する比率が高かったため、飲酒量と血圧との関係に及ぼす治療の影響を検討した。【結果】body mass index(BMI)は60歳までの男女では少量飲酒者では非飲酒者より低かったが、60歳以上ではこの関係は認められなかった。血圧は男女とも飲酒者では非飲酒者に比べ高かったが、飲酒による血圧の上昇は若年者に比べ高年者でより顕著であった。男女とも飲酒者では非飲酒者に比べてHDLコレステロールが有意に高かったが、この関係は年齢に関わらずに認められた(Alcohol Clin Exp Res 2010, 34 Suppl : S54-60)。一方、男女とも飲酒者では非飲酒者に比べてnon-HDLコレステロールは低かったが、この関係は高年者でより顕著であり、また喫煙歴による交絡を認めた(Metabolism印刷中)。65歳以上の高齢者のうち、降圧薬の投与を受けていない対象者では中等量(〓22and<44g ethanol/day)および多量(〓44g ethanol/day)飲酒群において非飲酒群に比べて血圧は有意に高かったが、降圧薬の投与を受けている対象者の各飲酒群と非飲酒群との血圧には有意差を認めなかった(Am J Hypertens印刷中)。【結論】飲酒による功罪両面の作用である血圧の上昇およびnon-HDLコレステロールの低下がともに高齢者では若年者に比べてより顕著である一方、飲酒によるBMIの低下は高齢者では認められなかった。このように飲酒と動脈硬化のリスク要因との関連性は年齢により影響を受けるが、さらに高齢者では降圧薬による治療歴や喫煙状況も考慮に入れて適正飲酒量を決定する必要があることが強く示唆された。
|