2011 Fiscal Year Annual Research Report
薬毒物関連死の剖検診断の新たな展開に向けて:遺伝学的背景の検討
Project/Area Number |
21390218
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
久保 真一 福岡大学, 医学部, 教授 (10205122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 健二 福岡大学, 医学部, 講師 (00090738)
柏木 正之 福岡大学, 医学部, 助教 (70301687)
松末 綾 福岡大学, 医学部, 助教 (70309920)
ウォーターズ ブライアン 福岡大学, 医学部, 助教 (00609480)
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Keywords | 横紋筋融解症 / 薬毒物 / 遺伝子 |
Research Abstract |
これまで覚せい剤が検出された剖検例からDNAを抽出し、RYR1遺伝子のhot spot領域、CPT II遺伝子、VLCAD遺伝子、CYP2D6遺伝子について、ダイレクトシークエンス法で変異を探索してきた。その結果、各遺伝子にそれぞれ様々な変異が認められている。即ち、RYR1遺伝子にアミノ酸置換を伴う変異が認められた。CPT II遺伝子は、酵素活性に関係しない変異が多くの剖検例で認められた。また、これまでに報告のない新規の変異が認められた。VLCAD遺伝子では、酵素活性に関係しない変異が認められた他は、アミノ酸置換を伴う変異は認められなかった。CYP2D6遺伝子では、活性の低いCYP2D6^*10のホモ接合体、未報告の変異が認められた。しかし、既に報告がある横紋筋融解に関連する変異は確認できていない。 そこで、本年度は、私たちの症例に認められた各変異と既報告の横紋筋融解関連遺伝子とを照合するだけでなく、PolyPhenとSIFTアルゴリズムを用いて、各変異がタンパク機能に影響を及ぼすかを検討した。その結果、RYR1遺伝子に検出したA612T変異とCPT II遺伝子に検出したF352C変異が、それぞれのタンパク質の機能障害を来す可能性が明らかとなった。A612T変異は、横紋筋融解症未発症の覚せい剤乱用者であった。F352Cは、覚せい剤乱用者で横紋筋融解症発症例2例、未発症例4例、また健常者4例から検出されていた。 これまでの研究から、覚せい剤乱用者における横紋筋融解症は、関連遺伝子の変異に加えて、覚せい剤濃度または覚せい剤による高体温症の関与のもとに発症している可能性が考えられた。
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