2011 Fiscal Year Annual Research Report
心筋リモデリングにおけるミトコンドリア転写因子制御の分子機構の解明と治療への応用
Project/Area Number |
21390236
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
筒井 裕之 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70264017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
絹川 真太郎 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教 (60399871)
石森 直樹 北海道大学, 大学病院, 助教 (70399848)
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Keywords | 心筋リモデリング / 心不全 / ミトコンドリア / DNA / 転写因子 |
Research Abstract |
ミトコンドリアは、生体における細胞機能を維持し生死を調節する重要な細胞内器官であるが、その機能はミトコンドリアDNAおよびその複製・維持を担うミトコンドリア転写因子によって高度に制御されている。本研究の目的は、心筋リモデリング・心不全におけるミトコンドリア転写因子の発現制御の分子機構を明らかにするとともに、ミトコンドリアDNA・ミトコンドリア機能の保持による臓器保護の基盤的分子機序をあきらかにすることである。 本年度は、心不全にメタボリックシンドローム・糖尿病が高率に合併することを踏まえ、両者に共通する病態基盤としてのミトコンドリア機能制御異常の役割について検討した。 高脂肪食による糖尿病モデルマウスでは、心筋のみならず骨格筋においてNAD(P)H oxidase由来スーパーオキサイドの産生が亢進し、ミトコンドリア電子伝達系複合体の酵素活性の低下、ミトコンドリア呼吸能の障害とともに運動能力の低下を引き起こすことがあきらかとなった。さらに、磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)を用いた骨格筋代謝の解析によりメタボリックシンドローム患者の骨格筋においても、ミトコンドリア機能障害がみとめられ、運動機能の低下と相関することがあきらかとなった。 一方、心筋梗塞後心不全モデルマウスでも、心筋ばかりでなく骨格筋における酸化ストレスが亢進しており、インスリンシグナル経路のうちAktのリン酸化およびGLUT-4の膜へのtranslocationが傷害されており、インスリン抵抗性が惹起されることを見出した。さらに、拡張型心筋症患者の骨格筋においても、メタボリックシンドロームと同様にミトコンドリア機能障害がみとめられ、運動機能の低下と相関することがあきらかとなった。 したがって、心不全とメタボリックシンドロームには、共通の病態基盤としてミトコンドリア機能異常・酸化ストレスが存在することが示唆された
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