2010 Fiscal Year Annual Research Report
重症心不全・致死性不整脈に対する分子標的療法の確立
Project/Area Number |
21390241
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松崎 益徳 山口大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (60116754)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 安宏 山口大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (00260349)
矢野 雅文 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (90294628)
山本 健 山口大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (50363122)
上山 剛 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (60380010)
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Keywords | アデノ随伴ウイルスベクター / 心不全 / RNAi干渉 / 遺伝子導入 |
Research Abstract |
AAVベクターが心臓選択的に感染する性質を利用して、重症心不全に対して心臓選択的に治療遺伝子を導入するシステムの開発を行うことが本研究の目的である。AAV9ウイルスカプシドの中で、心臓選択的に遺伝子導入を達成できるペプチド断片のスクリーニングを行った。蛍光相関スペクトル顕微鏡を用いて、心筋細胞に接着性の高いペプチドのスクリーニングを行ったが、18~22の合成アミノ酸で作成されたAAVペプチド断片は、ポジティブコントロールであるアルギニン連鎖ペプチドに比べて強い結合性を示すものは得られなかった。AAVカプシドの細胞結合にはペプチド配列だけでなく、感染する細胞の表面にある糖鎖(シアル酸、ガラクトース、マンノース、N-アセチルグルコサミンなど)が重要であると考えられた。 一方、長期的な遺伝子導入による心不全治療を目指す実験として、AAV9ベクターにBNPプロモーターとshRNA配列を結合したベクターを用いてRNA遺伝子干渉をマウス生体に導入する実験を行った。経静脈的にAAV9ベクターを2×10^11VP/mLを投与した後、1ヶ月後~3ヶ月後にかけて心機能を評価した。蛋白ホスファターゼ1(PP1)βを抑制するshRNAを導入した心不全モデルマウスにおいては、対照群に比べ有意に左室駆出分画が改善し、3ヶ月後の左室内圧測定では、左心室拡張性の著明な改善が認められた。PP1βは心不全で病態の進行とともに徐々に遺伝子発現が亢進し、心機能低下の原因として考えられる遺伝子のひとつである。心不全時に遺伝子発現が亢進するBNPプロモーターを用いることによって、心不全増悪に関連する遺伝子の転写活性を調節することは、有効な治療方法であると考えられた。心不全状態でのみ遺伝子治療がオンになる当たらし遺伝子治療ベクターの開発に役立つ治験であると考えられる。
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Research Products
(7 results)