2010 Fiscal Year Annual Research Report
血管内皮細胞のインスリン受容体基質が糖代謝・動脈硬化症において果たす役割の解明
Project/Area Number |
21390279
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
窪田 直人 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (50396719)
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Keywords | メタボリックシンドローム |
Research Abstract |
肥満や2型糖尿病で認められる骨格筋インスリン抵抗性のメカニズムの1つとして、血中から骨格筋間質へのインスリン移行が低下していることが以前より指摘されているが、その詳細な分子メカニズムについては十分に解明されていない。我々はこの分子メカニズムに血管内皮細胞のインスリンシグナルが重要な働きをしていると考え、血管内皮細胞の主要なインスリン受容体基質(IRS)2に着目し、血管内皮特異的IRS2欠損(ETIRS2KO)マウスを用いて検討を行った。ETIRS2KOマウスは、血管内皮細胞においてインスリン刺激によるAkt、eNOSのリン酸化が有意に低下していた。興味深いことに、このマウスでは単離骨格筋の糖取り込みには障害が認められなかったが、グルコースクランプでは、骨格筋における糖取り込みの低下が認められ、インスリンの骨格筋へのデリバリーが低下しているのではないかと考えられた。実際、ETIRS2KOマウスではインスリン投与後の毛細血管拡張能障害に伴い、間質インスリン濃度の増加に有意な障害が認められた。このことから、ETIRS2KOマウスでは、血管内皮細胞のIRS2欠損の結果、インスリンによるeNOS活性化が障害され、毛細血管拡張能、間質インスリン濃度が低下することにより、骨格筋のインスリン依存性の糖取り込みが障害されたと考えられた。そこで次にeNOSのmRNAを上昇させることにより、インスリンによるeNOS活性化能を改善することで、治療が可能かどうかについて検討を行った。血管内皮細胞のeNOSmRNAレベルがほぼ2倍となるような濃度のPGI2アナログをETIRS2KOマウスに投与したところ、インスリンによるeNOS活性化レベルはコントロールマウスとほぼ同程度まで増加し、毛細血管拡張能および骨格筋の間質インスリン濃度の回復に伴い、インスリン依存性の骨格筋における糖取り込みはほぼ完全に改善した。以上の結果から、インスリンによる血管内皮細胞のeNOS活性化能は毛細血管拡張能、間質へのインスリン移行を介して骨格筋におけるインスリン依存性の糖取り込みを調節していることが明らかとなった。
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Research Products
(12 results)