2012 Fiscal Year Annual Research Report
クリプトコックス症の病原因子検索、臨床病態解析とデータベースの構築
Project/Area Number |
21390305
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
河野 茂 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80136647)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 義継 国立感染症研究所, 生物活性物質部, 部長 (00311861)
泉川 公一 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (20404212)
掛屋 弘 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (40398152)
|
Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | クリプトコックス |
Research Abstract |
本研究は、当科に保存する豊富な臨床分離クリプトコックス株を材料に、新たな病原因子を検索、病原因子の発現の定量化を行い、臨床病態と病原因子の発現量をデータベース化、また、クリプトコックス症の症例を集積し、将来的に、クリプトコックスリファレンスセンターを設立、診断、治療における中心的役割をはたすことを目的としている。 平成21年度の当初の研究計画は、①臨床分離C. neoformans cDNAライブラリーの作成、②培養細胞に発現ライブラリーを導入しスクリーニング、③クローニングされたC. neoformans遺伝子のシークエンスを行い、データベースを用いてそれぞれのタンパクの情報を解析する。という予定であった。平成21~23年度には、全分離株について、gDNAを抽出し、血清型と菌株同士の相同性をみるために、遺伝子学的に検討を行った。血清型確認にはPCR法を用い、ほとんどの株がα型であった。遺伝子学的疫学研究にはMLST法を用いて、全株の7つの遺伝子解析を行い、数株を除いてほとんどの菌株がVNI型(数株はVNII型)であり、韓国や中国の報告とほぼ同様の結果が得られた。Genotypeの相違(VNIとVNII)での臨床的な特徴に差はなかった。平成24年度には、当科で経験された肺クリプトコックス症患者151例について臨床的な解析を行った。67例(41.4%)は基礎疾患を有しない患者に発症していた。残りの84症例(54.6%)は基礎疾患を勇姿、糖尿病、血液疾患、膠原病を有する患者が多かった。画像所見について、結節陰影を示す症例が多く、CNS感染症を有しない場合は、アゾール系抗真菌薬が使用されており、基礎疾患がない場合は3ヶ月、ある場合は6ヶ月の治療が行われており、良好な治療成績を示した。解析は引き続き行っており、次年度中に結果をまとめる方針である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、当科に保存する豊富な臨床分離クリプトコックス株を材料に、新たな病原因子を検索、病原因子の発現の定量化を行い、臨床病態と病原因子の発現量をデータベース化、また、クリプトコックス症の症例を集積し、将来的に、クリプトコックスリファレンスセンターを設立、診断、治療における中心的役割をはたすことを目的としている。 クリプトコックスの臨床のリファレンスセンターを目指した、臨床分離株の遺伝子学的、臨床的な解析は計画通りに進行しており、日本におけるnon-HIV患者におけるクリプトコックス症の実態調査について解明ができるものと思われる。一方、病原因子の解析については、臨床的な解析が終了後に、開始予定であり、現在のところ、進捗は思わしくない。
|
Strategy for Future Research Activity |
当科で保存しているクリプトコックス菌株の、遺伝子学的、真菌学的、血清学的分類に関する解析についてほぼ終了した。臨床的な解析を行った上で、菌株の臨床的な因子との紐付けを行い、臨床的な特徴から、クリプトコックスの微生物学的な病原因子との相関、動物実験における病原性の検討などを行い、クリプトコックスにおける病原因子発現と病態のさらなる解析を行う。 一方、本研究が開始された後に、本邦において、Cryptococcus gattiiによる感染症が発症しており、本菌についても、特に抗真菌薬への感受性の観点からin vitro、in vivoのアプローチにより抗真菌薬の有効性について評価を行う予定である。
|