2011 Fiscal Year Annual Research Report
リソソーム酵素と基質類似体との分子間作用の熱力学的・構造学的研究と新規治療法開発
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21390314
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
櫻庭 均 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (60114493)
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Keywords | リソソーム病 / ファブリー病 / ポンペ病 / α-ガラクトシダーゼ / α-グルコシダーゼ |
Research Abstract |
リソソーム酵素とその基質類似体との相互作用機構を解明し、その情報を基に、酵素を安定化する低分子化合物を見つけて、ファブリー病やポンペ病に対する酵素増強治療薬開発に役立てることを目的として研究を行った。 前年度までに、ヒト野生型およびアミノ酸置換を伴う変異型α-ガラクトシダーゼ(GLA)を酵母で大量発現し、GLAの基質類似体である1-デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)やガラクトスタチン-バイサルファイト(GBS)との分子間相互作用について、表面プラズモン共鳴法により解析した。その結果、両分子の結合と解離に関するキネティクス・パラメーターを決定した。また、GLAの結晶構造データを利用して構造学的解析を行い、GLA分子と基質類似体との結合に関係すると考えられる原子を特定した。 今年度は、これらの熱力学的および構造学的情報を基に、GLAと結合して、これを細胞内で安定化することが期待される5種類の新規ガラクトノジリマイシン誘導体を合成した。また、その効果を調べるために必要なファブリー病患者由来の培養線維芽細胞株を樹立すると共に、ファブリー病モデルマウスの繁殖を行った。 一方、ポンペ病に関しては、多くの日本人ポンペ病患者から得られた培養皮膚線維芽細胞に対して、基質類似体である1-デオキシノジリマイシン、N-ブチル-デオキシノジリマイシンやノジリマイシン-1-スルホン酸を投与し、S529Vアミノ酸置換を伴う酸性α-グルコシダーゼ(GAA)に対して、これらの低分子化合物が安定化効果を発揮すること、S529VはGAAに対して、分子表面の特定領域に限られた小さな構造変化を起こすこと、基質類似体は、GAAの活性ポケット部分に入り込み、GAAとファン・デル・ワールス結合や水素結合を介して相互作用することが示された。これらの解析結果は、ポンペ病に対する酵素増強治療薬の開発に役立つと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に基づき、代表的なリソソーム病に関連する野生型および変異型酵素を大量発現し、これらの酵素と基質類似体どの結合に関して、熱力学的および構造学的情報を得ることに成功した。さらに、その情報を基に、リソソーム酵素と結合し、これを安定化する可能性がある低分子化合物を合成し、最終年度に、その効果を判定する段階まで進んでおり、研究は、ほぼ予定通りに進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、新規に合成した低分子化合物の性状を解析すると共に、当該低分子化合物が実際にリソソーム病関連酵素の安定化効果を有するか否かを、リソソーム病患者由来の培養細胞およびリソソーム病モデルマウスを用いて明らかにする予定である。その結果を基に、さらに優れたリソソーム病酵素増強治療薬を開発するための基盤を構築していく。
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