2011 Fiscal Year Annual Research Report
乾癬表皮における細胞内情報伝達機構を介する増殖と分化制御の研究
Project/Area Number |
21390323
|
Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
飯塚 一 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90113513)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 明美 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (30241441)
高橋 英俊 旭川医科大学, 医学部, 講師 (00216748)
本間 大 旭川医科大学, 医学部, 講師 (50344578)
|
Keywords | 乾癬 / 表皮細胞 / 細胞内情報伝達 / MAP kinase / STAT3 / Raf / podoplanin / corneodesmosin |
Research Abstract |
本研究は乾癬表皮細胞に内在する情報伝達機構の異常と、それに付随する乾癬表皮の表現型との関連の解明を目的にしている。 1.表皮細胞における95KDB-Rafのノックダウンによる表皮細胞の増殖低下は、角化マーカーであるinvolucrin,loricrinの発現上昇と連動していることを示した。この結果は、昨年の報告書で示した表皮細胞培養系におけるconfluent状態に対応した所見とみなされる。(投稿準備中) 2.表皮細胞のSTAT3依存性podoplanin発現では、乾癬表皮でも、穎粒層陰性の、より細胞密度の上昇した表皮でpodoplanin陽性所見が得られることを見出した。(Honmaetal : J Dermatol Sci 65 : 134, 2012)この所見は、EGF受容体のリン酸化と、少なくともin vitro培養系では連動しており、増殖充進に伴う強い細胞接着が、おそらくjuxtacrine機構で、EGF受容体を介するSTAT3リン酸化を介したシグナルをもたらし、podoplaninが誘導されることを示唆している。 3.表皮細胞の終末角化と角層剥離機構は、極めて秩序だったシステムであることが、lamellar granule分泌(Ishida-Yamamomo et al. PLosOne 7 : 1, 2012)やkallikrein-proteasesystem(Kishibe et al : J Invest Dermatol(in press))により示され、乾癬表皮の分化異常の新しい解析法となりうることが示唆された。 以上の結果は、当初の予想通り、乾癬において、増殖と分化のシグナルが、正常とは全く異なるものの、極めて秩序だった整合性のあるシステムであることを想定させる。また増殖後、基底細胞層から切り離された乾癬表皮の運命が、早期に決定づけられていることを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乾癬表皮がstem cell-transient amplifying(TA) cell仮説における、TA cellの増大として解釈され、これがconfluencyに依存することは、当初の予想通りであり、これらの結果は、論文として公表してきたが、B-Rafに関しては、おそらくEGF受容体の活性化を介する2次的変動であることが、現時点では推定されるため。ただしB-Rafisoibrmの変動が、confluency依存性マーカーとしては極めて有用であることは確認されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
われわれの研究は、乾癬表皮に内在する異常について検討するものであり、現時点でpodoplaninが、TA cellの、それも細胞密度に強く依存した特殊なマーカーであることを解明している。表皮細胞において、増殖充進依存性マーカーは数多く存在するが、あわせて細胞密度にも依存するマーカーは、研究代表者の知る限り、事実上存在しない。このシステムは、現在までのデータでは、EGF受容体:MAPkillase-Raf経路と、STAT3リン酸化に依存している。次年度は、研究遂行の最終年度にあたるため、この経路の詳細な解析も含めて研究のまとめに入ることになるが、本研究により、乾癬表皮に内在する、増殖と細胞密度に依存する秩序につき、細胞内情報伝達シグナルの観点で、分化、終末角化もあわせて、総合的な理解が進むことが期待される。いずれにしても我々のアプローチは、近年、免疫担当細胞に集約されがちな、乾癬研究の取り組みとは相当異なっており、かなりユニークなものと自負している。
|
Research Products
(4 results)