2009 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子ソックス9を指標とした成体肝・膵・腸管幹細胞同定の試み
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21390358
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川口 義弥 Kyoto University, 医学研究科, 講師 (60359792)
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Keywords | 幹細胞 / 膵臓 / 肝臓 / 転写因子 |
Research Abstract |
以下の成果を挙げたので論文投稿した。現在、revise実験にて再投稿準備中である。(1)Sox9は胎生初期E13.5において未分化内胚葉上皮に広く発現する。膵臓においてはE16.5で膵管構造に限局化し、腸ではE18.5よりcryptに限局化する。肝外胆管ではE13.5より発現するが、肝臓内では肝内胆管構築が始まるE16.5より発現する。8週齢マウス、加齢マウス、ヒト成体においても腸管crypt領域、膵管・胆管に限局した発現をする。(2)胎生期Sox9 lineage tracingでは出生時に全ての腸上皮・膵細胞がラベルされたが、肝臓では肝細胞のごく一部がラベルされるのみであった。(3)成体でのSox9-Inducible genetic lineage tracingからは、腸管・肝臓・膵臓にてSox9陽性細胞より持続的な細胞供給が生理的条件下で行われている。但し膵内分泌細胞のみはSox9陽性細胞からの供給を受けない。(4)MCDE食等による肝障害では生理的肝細胞分化機構が促進されたが、胆管障害モデルである胆管結索等では阻害された。膵障害後にSox9陽性細胞が内分泌細胞へと分化する証拠はない。以上より、肝臓・膵臓の臓器形成と成体組織維持においては幹/前駆細胞のスイッチング・変化が起こると考えられる。胎生期における造血器官としての機能から、成体代謝中枢へと機能が変わる肝臓においては、Sox9陰性肝芽細胞から胆管構築中のSox9陽性細胞へと細胞供給の担い手が変化する。また、胎生膵Sox9陽性幹/前駆細胞は内分泌・外分泌へと分化し得るが、出生のタイミングで膵管構築から離れ、膵島という機能的単位を構成する成体膵内分泌細胞は、膵管構築中のSox9陽性幹/前駆細胞からの供給を受けない。臓器形成と成体臓器における組織構築・機能を細胞分化の供給源としての幹細胞と関連付けて論じた。
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