2011 Fiscal Year Annual Research Report
糖ヌクレオチド輸送体変異マウスを利用した軟骨における糖鎖機能の解析
Project/Area Number |
21390428
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Research Institution | National Research Institute for Child Health and Development |
Principal Investigator |
平岡 秀一 独立行政法人国立成育医療研究センター, 免疫アレルギー研究部, 研究員 (20291156)
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Keywords | 糖鎖 / 生体分子 / 軟骨疾患 / コンドロイチン硫酸 / 関節疾患 |
Research Abstract |
本研究では、コンドロイチン硫酸(CS)の合成低下の誘導とその結果発生する軟骨の異常について分析し、軟骨におけるCS機能を解析する。フロックスマウス[Slc35d1(flox/flox)Slc35d2(Ko/+)及びSlc35d1(flox/flox)Slc35d2(Ko/Ko)]へ軟骨特異的にCreを発現するCol2-CreERT-Tgを導入、タモキシフェン(TXF)投与により遺伝子を誘導破壊し、Slc35d1とSlc35d2遺伝子の欠損による軟骨CS合成低下の誘導を試みた。しかし、期待に反して遺伝子の誘導破壊が不十分で、軟骨CSの低下は認められなかった。解決策として、次の誘導破壊法を検討した。 (1)フロックスマウスに対し四肢の発生段階でCreを発現するPrxCreTgを導入した。その結果、マウスの四肢は著しく短縮し、第三一第四指間の関節に異常が見られた。新生児の軟骨を分析すると、Slc35d1とSlc35d2をともに欠損するマウスでは、Slc35d1単独のものに比べ相乗的に表現型が増加していた。いずれも、軟骨CSの合成は著しく低下しており、長期間のCS合成低下が軟骨に与える影響について分析が可能となった。 (2)全身にCreERTを発現するRosaCreERT-Tgを導入、関節腔へのTXFの注入により、膝関節軟骨での遺伝子破壊を試みた。一部軟骨での誘導的遺伝子破壊が観察された。関節腔から全身へ漏出するTXFによる影響を把握するため、成体マウス腹腔にTXFを投与したところ、5日間の連日投与後急速に体重が減少し、死亡することが新たに判明した。一方、関節腔へのTXF投与では体重減少は誘導されず、漏出による影響は少ないと考えられた。腹腔内TXF投与による致死は新たに見つかった表現型であり、ヒトSLC35D1遺伝子の異常による新たな遺伝病の発見や診断法につながる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コンドロイチン硫酸の合成低下の誘導とそれにより生じる軟骨の異常について分析し、その機能を解明することが、本研究課題の目的である。Slc35d1の誘導的遺伝子破壊については、研究計画と若干異なる手段を用いることになったが、それによりSlc35d1遺伝子欠損による新しい表現型がみつかり、この遺伝子の機能解明へ新たな道筋が出来た。その他の分析は計画通り行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
誘導的遺伝子破壊による成体マウスのコンドロイチン硫酸(CS)機能の解析について、当初の予定ではCo12CreERT-Tgを用いて関節軟骨のCS量低下を誘導する予定であったが、期待通りの効果が得られず、四肢特異的なPrxCre-TgによるCre発現系を導入した。長期飼育後の四肢軟骨を分析、軟骨CS量低下と関節老化との関連について調査する。 また、RosaCreERT-Tgの導入により成体マウスのSlc35d1遺伝子を全身で破壊すると、急激に体重が減少し死亡することが判明した。ヒトSLC35D1のleaky mutationによる疾患は未同定であるが、出生後も長期間生存出来ると考えられるので、このマウスモデルの致死原因の究明は新たなヒトSLC35D1変異の同定に貢献すると期待される。
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Research Products
(2 results)