2010 Fiscal Year Annual Research Report
骨髄球系細胞活性化制御分子CD300を標的とした敗血症治療法の開発
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21390481
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田原 聡子 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 助教 (20360589)
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Keywords | CD300a / CD300d / MAIR-I / MAIR-II / 盲腸結紮穿孔法 / 敗血症モデル |
Research Abstract |
【研究目的】自然免疫応答は感染防御の最前線を担う生体防御機構であり、この活性化が不十分であると病原体感染が全身に広がり、全身性炎症反応症候群を呈して敗血症の発症に至る。そのため、自然免疫応答の活性化制御機構を明らかにすることは、敗血症病態の分子機構の理解と人為的制御法の開発において重要な課題である。申請者らは、自然免疫応答において主要な働きを担う骨髄球系細胞の活性化受容体であるMAIR-II(CD300d)を同定し、MAIR-II遺伝子欠損マウスを樹立した。このマウスに盲腸結紮穿孔法(CLP)にて腹膜炎による敗血症を誘導した結果、野生型マウスが全例生存する条件下で、MAIR-II遺伝子欠損マウスは全例死亡することを見出した。本年度では敗血症発症におけるMAIR-IIの分子機構を明らかにする。 【方法と結果】 1,MAIR-II遺伝子欠損マウスではCLPによる細菌を排除する能力が低下する:CLP誘導後、腹腔内の細菌数を定量した結果、野生型マウスでは検出できないのに対し、MAIR-II遺伝子欠損マウスで平均10^7cfu/ml残っていた。この結果より、MAIR-II遺伝子欠損マウスでは細菌を排除する能力が低下することにより敗血症が増悪し致死することを見出した。 2,炎症性単球は細菌排除に重要な役割を持つ:このCLPモデルで細菌排除に働く実効細胞を明らかにするため、野生型由来のMAIR-IIを発現する種々の細胞をMAIR-II遺伝子欠損マウスに移入後CLPを誘導した。その結果、Ly6C陽性CCR2陽性の炎症性単球を移入すると生存率が回復することを見出した。 3,MAIR-II遺伝子欠損型炎症性単球はLPS刺激による炎症性サイトカイン産生量が低下する:炎症性単球におけるMAIR-IIの機能を明かにするため、野生型またはMAIR-II遺伝子欠損型炎症性単球をin vitroでLPS刺激したところ、MAIR-II遺伝子欠損型炎症性単球では、炎症性サイトカインであるTNF-αおよびIL-6の産生量が低下し、抗菌作用のあるMPOおよびiNOSの産生も低下していた。 【本年度の研究成果】MAIR-IIは炎症性単球において、LPS刺激による炎症性サイトカインの産生を活性化し、生体においては細菌排除に重要な働きがあることを明らかにした。
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Research Products
(10 results)