2011 Fiscal Year Annual Research Report
うつ病者の自殺予防に関する治療的ナラティブアプローチの開発
Project/Area Number |
21390599
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
長谷川 雅美 金沢大学, 保健学系, 教授 (50293808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 一海 金沢大学, 保健学系, 准教授 (50251963)
長田 恭子 金沢大学, 保健学系, 助教 (60345634)
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Keywords | うつ病者 / 自殺予防 / ナラティブアプローチ / 治療的アプローチ |
Research Abstract |
23年度は、うつ病者の自殺予防に有効な治療的ナラティブアプローチを開発し、介入プログラムを策定することを目的とした。これは、薬物療法を受けていても自殺念慮が消えないうつ病者にとって、日常生活を送る中で、自分の感情やこだわりについて、客観的に見つめ、そのエネルギーを調整することに繋がり、医療者にとっては新たな治療的介入方法を得ることになる。研究計画として、本年度は前年度に引き続き、日本とオーストラリアで対象者との面談によるアプローチを試み、その内容を質的に分析して治療的な効果を検証し、介入プログラムの策定に至ることであった。対象者の思考の修正については、毎回のセッションで専門職である研究者やその協力者からトレーニングを受け、段階的に考え方を修正していくことで、自殺念慮が軽減しさらに社会参加できるようになるプロセスを踏む。日本とオーストラリアの対象予定者に研究参加の同意を得ながらデータ収集を試みた上で,改善された症状や思考の変化に伴う3段階を設定し分析を進めたが、最終まで研究協力者となり得たのは、オーストラリアで7名であり、わが国では5名であった。また内容的に本研究に適さないケースやケースごとのセッション回数のばらつきがあり、それらを一括して3つの段階の特徴を抽出し、両国間で検討を重ねデータを比較したが、治療効果という点で個別性があり、介入プログラムを策定するまでには至らなかった。そこで、さらに効果的な介入方法を検討した結果、オーストラリアで実践されている感情調整療法(MBT)に着目した。これは主にPTSDや不安障害、パニック発作、物質依存症者の患者に施行されている療法で、オーストラリアの研究協力者(医師)も自分のクリニックで実施しており、とても効果的であることがわかった。次年度はこのMBTを念頭に入れたセッションを試行したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本とオーストラリアの対象予定者に研究参加の同意を得ながらデータ収集を試みたが、改善された症状や思考の変化に応じて3段階を設定し、その特徴と内容の分析を進めた。しかし、最終まで研究協力者となり得たのは、オーストラリアで7名であり、わが国では5名であった。この結果から、ケースを増やすため、次年度に継続して調査する必要があると考える。また対象者によっては、この方法が自殺念慮に関して必ずしも有効でないことがわかり、介入方法を再検討する必要性が示唆された。 研究者間で議論を深めた結果、オーストラリアで実施している感情調整療法を組み込んだ方が、うつ状態の改善と自殺念慮の軽減につながり、当事者の感情のコントロールと日常生活における行動化につながるのではないかという結論に達した。
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Strategy for Future Research Activity |
全ての対象者に認知行動療法に伴うナラティブアプローチが有効ではないことがわかり、さらに効果的な介入方法を検討した結果、オーストラリアで実践されている感情調整療法(MBT)に着目した。研究者間で意見を交換した結果、今後の研究プロセスにおいてこの方法を導入し試行することの同意を得た。 これは主にPTSDや不安障害、パニック発作、物質依存症者の患者に施行されている療法で、オーストラリアの研究協力者(医師)も自分のクリニックで実施しており、とても効果的であることがわかった。次年度はこのMBTを念頭に入れたナラティブアプローチによるセッションを試行したいと考えている。 研究を首尾よく遂行する上で、本研究に参加することに同意を得た一定人数の対象者を得ることを期待するが、研究内容の性質上、対象者の選定に時間を要し、また数回の介入回数が必要となることから、デー収集期間の延長を余儀なくされることが予想される。
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Research Products
(4 results)