Research Abstract |
本研究の目的は,密教文化の現地調査をすすめることで,インド仏教が密教へ変化をとげた後のヒマラヤを越え中国甘粛省・河西回廊に到達し中原,内蒙古へと伝播・変容をとげた表象芸術の解明にある. 班究の意義は,24年度にかけ信仰の点(信仰拠点)-線(経路・巡礼路)および面(文化圏)にある「場」から有形の造形と無形の表現の表象芸術にある基層の文化を統合的に把握できる意義がある. 具体的調査の内容は,21年度の第一次調査(8中~9月上旬)で河西回廊の蘭州-祁連山脈-河西回廊に至る間の密教信仰拠点(蘭州・炳霊寺石窟~敦煌莫高窟)および仏教伝播前の信仰拠点(雷台漢墓,魏晋六朝墓)をむすびつける巡礼・交易路(西域難道・吐蕃古道から河西回廊)を結ぶ表象芸術を調査した. 調査の行程は,甘粛省蘭州を起点に炳霊寺石窟-祁連山脈にそって甘粛省河西回廊に至る経路を東西にたどる間の有形・無形の表象芸術を調査した.調査内容は,1)無形の表現および有形の造形が年に一度介する信仰・祭祀の「場」である蘭州・炳霊寺石窟,張液(民楽県童子寺石窟,粛南裕固族自治県・金塔寺石窟,馬蹄寺石窟,大仏寺博物館,黒水城,酪駝城遺跡),高台県(博物館),文殊山石窟,嘉峪関(長城,魏晋〓画墓博物館,許三湾城遺跡),瓜州(鎖陽城趾,東千仏洞(5,2,7窟他))において魏晋-吐蕃-西夏-元時代の造形・表現を調査した.つぎに2)甘粛省・敦煌の調査は,敦煌の吐蕃期図像(敦煌莫高窟:第9,156窟-晩唐;吐蕃期,第332,465窟-唐~元)を核に,西・北千仏洞(西千仏洞:15,16窟-中唐~五代(11,18,20),安西楡林窟:19窟,32窟),並びに敦煌博蔵品(金銅仏,護符,荘厳具),五個廟を調査した. 第二次現地調査(3月)は,敦煌莫高窟,楡林窟,東西千仏洞,五個廟石窟の調査をすすめた.現地調査の成果としてヒマラヤを越え伝播した密教の造形と表現が点-線-面で広域的な影響を五涼時代から清時代まで約1500年の長期間維持され,今も信仰が継続し基層の文化となっていることを解明した.
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