2009 Fiscal Year Annual Research Report
タジキスタンにおけるゾロアスター教遺構の発掘調査及び仏教との交渉についての研究
Project/Area Number |
21401027
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
蓮池 利隆 Ryukoku University, 仏教文化研究所, 客員研究員 (50330022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 至弘 龍谷大学, 理工学部, 教授 (30127063)
佐野 東生 龍谷大学, 国際文化学部, 准教授 (60351334)
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Keywords | ゾロアスター教 / 初期浄土教信仰 / 偶像崇拝 / 方形拝火教神殿 / 祖先崇拝 / タジキスタン / バクトリア・コイン / ギリシア文字銘文 |
Research Abstract |
中央アジアの拝火教遺跡発掘調査によって、仏教と地域特有の宗教との交渉が次第に明らかとなっている。タジキスタンやウズベキスタンの南部は歴史的にトハーラと呼ばれた地域であり、2世紀から3世紀にかけて北西インドを中心として栄えたクシャーン朝の故郷であった。そのクシャーン期に成立した初期大乗経典、とりわけ浄土教経典成立にはイラン文化や宗教の影響があったことが指摘されている。したがって、その故地であるトハリスタン(トハーラの地)における発掘調査はクシャーンの宗教を解明する上で重要な意義を持つ。タジキスタンの研究者によれば、ゾロアスター教の習俗化した宗教がこの地域特有のものであり、その要素として拝火信仰、偶像崇拝、祖先崇拝を挙げている。これまでの発掘調査では方形の拝火神殿を検出しており、小型の偶像も出土している。この方形拝火教神殿が常行三昧堂に転用されたと推測される。2009年度調査において発掘された特徴的礎石(方形礎盤上に円筒状台)は西域南道ニヤ遺跡の常行三昧堂の礎石と酷似しており、また室内の土壇状遺構も共通する建築様式である。中央アジア(タジキスタン)から東トルキスタンへの初期浄土信仰を考察する上でも有用な発見であると評価できる。また、クシャーン期よりもさらに下層まで発掘を実施。バクトリアのコインが出土し、タジキスタン中部の歴史的背景が確認された。さらに、陶器片に書かれた文字が出土。銘文はギリシア文字の草書体で、言語学辞書などによればバクトリア語を表記したものと考えられる。バクトリア語の表記に用いられるのは碑文体と草書体で、碑文体はクシャーン朝期の碑文や貨幣に刻まれた文字である。草書体は碑文体をくずした文字でササーン朝(3世紀から7世紀)以後の資料に用いられる。
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Research Products
(7 results)