2010 Fiscal Year Annual Research Report
タジキスタンにおけるゾロアスター教遺構の発掘調査及び仏教との交渉についての研究
Project/Area Number |
21401027
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
蓮池 利隆 龍谷大学, 仏教文化研究所, 客員研究員 (50330022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 至弘 龍谷大学, 理工学部, 教授 (30127063)
佐野 東生 龍谷大学, 国際文化学部, 准教授 (60351334)
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Keywords | ゾロアスター教 / タジキスタン / 祖先崇拝 / 納骨堂遺構(ナウス) / クシャーン朝コイン / オスアリ(納骨容器) / 初期浄土信仰 / 偶像崇拝 |
Research Abstract |
当研究課題による発掘調査は2年目であり、2007年の試掘調査からは4年目になる。その成果として、タジキスタンの古代宗教の特徴である、ゾロアスター教を基盤とした偶像崇拝・祖先崇拝の実態が次第に解明されつつある。発掘を実施している二つの遺構のうち、カラ・イ・カフィルニガン第十(KKF-10)遺構は、中心となる方形拝火神殿とその周囲の居住空間、厨房施設、貯蔵部屋、沐浴施設、及び付属工房からなる宗教的複合施設(コンプレックス)であったことが判ってきた。 また、今年度の調査では城壁の外に造られた墳墓数ヶ所の発掘調査も並行して実施している。中央アジアの墳墓はナウスと呼ばれ、一旦、風葬・鳥葬にした後、遺骨を収集して納骨容器(オスアリ)に入れて納骨施設に安置する。この納骨施設がナウスであり、集落からはなれた小高い場所に設けられるのが一般である。今回の墳墓発掘では、そのような埋葬様式が確認されたことになり、古代タジキスタンの習俗を知る上でも大きな成果であった。 実際の調査では、日干し煉瓦を積み上げた壁の一部が残されており、その中に遺骨が散乱していた。副葬品も金製品の断片やクシャーン朝コインがわずかに収集されたにとどまっている。その状況からかつて盗掘にあったものと考えられる。 現在のタジキスタンにおいても、春分の日に先祖のナウス(墳墓)に詣で、死者の魂を迎えてともに食事をする習慣がのこっている。ナウス遺構の存在は、遺跡が栄えていた7~8世紀頃に、すでにその習俗の基本的考え方があったことがあったことを示している。中央アジア独特の習俗、すなわち故人の肖像を納骨容器の上に模るのも、死後の世界から還ってくる魂を喜ばせるのが目的であったとされている。死後の世界と現世の交流という意識の中に、初期浄土教信仰とのかかわりを推測させるものがある。
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Research Products
(6 results)