2011 Fiscal Year Annual Research Report
タジキスタンにおけるゾロアスター教遺構の発掘調査及び仏教との交渉についての研究
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21401027
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
蓮池 利隆 龍谷大学, 仏教文化研究所, 客員研究員 (50330022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 至弘 龍谷大学, 理工学部, 教授 (30127063)
佐野 東生 龍谷大学, 国際文化学部, 教授 (60351334)
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Keywords | ゾロアスター教 / 拝火教小型拝火炉 / テラコッタ菩薩像 / ガンダーラ仏像 / デジタル3D復元 / アルダ・ウィラーズ / イスラームの背景 |
Research Abstract |
平成23年度の現地調査では平成21年度以前から作成を続けていた遺跡全体の地形図を完成することができた。1970年代の旧ソビエト連邦時代に発掘された遺構群と今回の調査で検出した遺構との関連性を比較考察する上でも重要な成果だと考えている。今年度に発掘調査を開始したチィタデル(領主居住領域)部分、KKF-12遺構からは壁遺構が発見されており、これまでに発掘された遺構群における壁遺構の方向、及びレベルも同じであることから、同時代のものと考えられる。この遺構からも拝火教のマジマル(小型拝火炉)や灯明皿が出土し、拝火教の存在を裏付けている。柄のあるマジマルは日本に伝来した仏具である柄香炉の形状を彷彿させる興味深いものである。また、昨年度まで継続して発掘しているKKF-11遺構からはテラコッタの小像2個が出土している。その中の1個は完全な形で出土しており、高さ約12センチ、宝冠を頂く菩薩像だと考えられる。これまでに出土したテラコッタ像はゾロアスター教の神像であったが、この像は仏像としての雰囲気を備えているように思われる。タジキスタンの研究者もクシャーン朝のガンダーラ仏像と共通するとして高い評価を与えている。発見後、岡田至弘教授にE-メールで連絡を取り、教授の指示に従って、立像について各15度方向毎の24カットを撮影した。帰国後、データを岡田教授に依頼し、理工学部においてデジタル3D復元を実施中である。 タジキスタンの宗教的背景に関する研究としては、中世ペルシア語文献『アルダー・ウィラーズ・ナーメ』の翻訳を行い、研究成果として約200部を印刷した。その中から数冊を研究分担者である国際文化学部の佐野東生教授に提出し、内容の検討を依頼している。それは、時代的に先行するゾロアスター教がイスラームに与えた影響を考える上でも大きな意義をもつと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査開始時からの課題であった地形図が完成し、遺跡全体の中に広がる遺構群の位置関係を明確に把握・評価できるようになった。平成23年度には遺跡城郭内の領主居住領域チィタデルの発掘を開始し、日干し煉瓦による居住区画の壁面を検出した。文献研究においてはゾロアスター教の啓蒙書である『アルダー・ウィラーズ・ナーメ』を和訳し、タジキスタンの習俗との関連性についての検討をおこなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
タジキスタン国立博物館との協力体制はより強固なものになってきている。現在調査中のカラ・イ・カフィルニガン城砦遺跡の完全な調査には少なくとも今後数年を要するものと考えられる。博物館のサイドムロド・ボボムロエフ館長は今後も調査協力を期待する旨を伝えてきている。在タジキスタン日本大使館との連絡も密に取っており、昨年度から調査期間中に一度は会合を持ち、調査への理解と協力を求めている。パキスタンやアフガニスタンの情勢を見極めながら慎重に調査を継続していきたいと考えている。
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Research Products
(8 results)