Research Abstract |
本研究は,中国から日本へ大量に送出される新華僑が,どのような送出システムによって来日するのかを,中国国内におけるインテンシブなフィールドワークに基づいて解明することを目的とした。 4年間の計画で本研究を進めているが,第2年目にあたる本年度は,前年度に続き,日本における新華僑の人口・出身地・分布に関する文献,統計,地図,インターネット情報(特に中国語)などの資料収集を行なった。また併せて,日本に滞在中の新華僑から,来日の経緯,滞日生活の実態などを聞き出し,それらの情報をもとに,今後の中国でのフィールドワークの準備を進めた。 2010年6月には,これまでの研究成果の一部をまとめて,福建省福清市の調査事例の論文を,「地理空間」(地理空間学会機関誌)に掲載した。 2010年8月から9月にかけて,研究メンバー全員で,伝統的に日本へ多くの華僑を送出して来た浙江省温州市西郊,麗水市青田県において,僑郷(華僑の故郷)としての特色背景,要因,日本への送出経緯などについてインテンシブな調査を実施した。その結果,在日の青田県出身の老華僑が僑郷に対して,学校建設をはじめとする社会経済的な大きな貢献をしてきたこと,近年,海外渡航先が日本からヨーロッパへ大きく変更してきたことなどが明らかになった。これらの中間的な研究成果は,2011年3月の日本地理学会において発表した。 また,2010年8月には,次年度の調査予定地域である黒竜江省ハルビン市方正県で予備的調査を実施し,現地関係者への協力依頼を行い,関連資料を収集した。
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