Research Abstract |
本研究は,中国から日本へ大量に送出される新華僑が,どのような送出システムによって中国から来日するのかを,中国国内におけるインテンシブなフィールドワークに基づいて解明することを目的としている。 本研究計画は4年間の計画で進めているが,第3年目にあたる本年度は,各研究メンバーが日本および世界各地における新華僑に関する資料収集を行なうとともに,日本在留の新華僑に対して聞き取り調査を実施した。特に研究代表者である山下は,日本における新華僑の最大の集積地である池袋チャイナタウンにおいて,新華僑の出身地,来日過程,経済活動などについて詳細な調査を継続している。 中国における現地調査は,本年度は,近年,新華僑を多く送出している黒竜江省のハルビン,牡丹江,鶏西において実施した。とりわけ鶏西は,中国国内においても日本語学習が非常に盛んな地域であり,日本留学者を多く送出している地域である。鶏西における日本語学習の発達過程や日本への新華僑の送出に関する多くの資料を収集することができ,今後,さらに新華僑の送出と日本語教育との関係について考察していくことにした。 これまでの調査で得られた資料から,中国から日本への新華僑の送出において,黒竜江省ハルビン市方正(ほうまさ)県が重要な調査対象地域であることが明らかになってきた。そこで,研究計画の最終年度である次年度(平成24年度)は,第二次世界大戦中,日本の満州開拓団の本部が置かれ,中国残留孤児が多く存在した方正県において,インテンシブな調査を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究メンバーの勤務地は各地に分散しているが,日頃から頻繁に電子メールで連絡を取り合っているために,研究は順調に遂行していると言える。中国における現地調査では,研究協力者を得るのが容易ではないものの,多くの関係者に聞き取り調査を行なうことができ,研究データは徐々に蓄積されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(平成24年度)は,本研究計画の最終年度であるために,これまでの3年間で得られた研究成果を整理検討するとともに,最終的な調査を黒竜江省ハルビン市方正県において突施する準備を進めている。本研究計画ですでに実施した福建省福清市,浙江省温州市郊外の青田県,そしてハルビン市方正県のインテンシプなフィールドワークの成果を詳細に記述・分析し,総合的に考察することにより,本研究の当初の目的は十分達成されるものと思われる。
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